経費にできるもの・できないものの判断基準をわかりやすく解説

確定申告

「これって経費になるの?」

個人事業主や中小企業の経営者から、会計事務所にもっとも多く寄せられる質問のひとつです。経費の範囲を正しく理解すると、無駄な税金を払わずに済みます。一方で、経費にならないものを計上してしまうと、税務調査でトラブルになることも。

今回は、経費の判断基準をわかりやすく解説します。

そもそも「経費」とは何か?

経費とは「事業のために使ったお金」のことです。

もう少し正確に言うと、「売上を得るために必要な支出」が経費として認められます。この「事業との関連性」が、経費かどうかを判断する一番の基準です。

金額の大小は関係ありません。1,000円でも事業に関係なければ経費にはなりませんし、10万円でも事業に必要なものであれば経費になります。

判断に迷ったときの3つの質問

  • その支出がなければ、売上は減りますか?
  • 誰と・何のために使ったか、具体的に説明できますか?
  • 事業をしていなくても、その支出をしていましたか?

3つ目が「はい」なら、それは事業のためではなく個人的な支出(家事費)である可能性が高くなります。

経費にできるものの例

経費として認められる主なものをご紹介します。

種類具体例
通信費事業用スマホ代・インターネット代
交通費打ち合わせや営業の電車代・ガソリン代
消耗品費文房具・プリンターのインク・名刺
接待交際費取引先との食事・贈答品
広告宣伝費チラシ・ホームページ制作費
研修費セミナー参加費・専門書の購入費
家賃事務所の賃料(自宅兼用の場合は按分)
外注費業務を委託した相手への報酬
支払手数料振込手数料・決済手数料・税理士報酬
租税公課個人事業税・固定資産税(事業分)・印紙代
損害保険料事務所の火災保険・事業用車両の保険
減価償却費10万円以上の備品・車両などの取得費

経費にできないものの例

種類理由
プライベートの飲食費事業と関係のない個人的な支出
自分自身の給与個人事業主は自分への給与を経費にできない
健康診断・人間ドック事業との直接的な関連性がない
罰金・税金の延滞料法律上、経費として認められない
スーツ・洋服代普段も着られるものは経費にならない
所得税・住民税個人にかかる税金であり事業の経費ではない
国民健康保険料・国民年金経費ではなく社会保険料控除で処理する
生命保険料経費ではなく生命保険料控除で処理する
借入金の元本返済返済は費用ではない(利息は経費)

ここで大切なのが、「経費にならない=税金が減らない」ではないということです。国民健康保険料・国民年金・生命保険料などは、経費ではなく所得控除として所得から差し引けます。処理する場所が違うだけで、税金は減ります。

なお、健康診断費用は個人事業主本人の分は経費になりませんが、従業員に対して行う健康診断は、全員を対象とするなど一定の要件を満たせば福利厚生費として経費にできます。

グレーゾーンは「家事按分」で対応する

自宅で仕事をしている場合、家賃・電気代・インターネット代などは「仕事にもプライベートにも使っている」という状況になります。このような場合は「家事按分(かじあんぶん)」という方法で、使用割合に応じて経費計上できます。

たとえば、自宅の家賃が月10万円で、仕事に使っている部屋が全体の30%の広さであれば、3万円を経費として計上できます。

支出の種類按分の基準
家賃仕事で使う部屋の面積の割合
電気代作業時間の割合
通信費仕事での使用時間の割合

按分割合は合理的であれば問題ありませんが、あまりに高い割合にすると税務調査で指摘される可能性があります。一般的には50%以下が目安です。

詳しい計算方法は「個人事業主の「家事按分」とは?自宅兼事務所の経費にできる割合と計算方法」で解説しています。

10万円を超えるものは「その年に全額経費」にならない

意外と知られていないのが、金額による処理の違いです。

取得価額処理方法
10万円未満その年に全額経費(消耗品費など)
10万円以上20万円未満一括償却資産として3年で均等償却も選べる
30万円未満青色申告なら全額経費(少額減価償却資産の特例。年間300万円まで)
30万円以上減価償却で複数年に分けて経費化

25万円のパソコンを買った場合、白色申告なら数年かけて償却しますが、青色申告なら購入した年に全額経費にできます。これも青色申告のメリットのひとつです。

経費計上で大切な3つのポイント

① 領収書・レシートを必ず保管する
経費として認められるには、支出の証拠が必要です。領収書やレシートは7年間の保管義務があります。最近はスマホで撮影して電子保存することも認められています。

② 事業との関連性を説明できるようにする
税務調査では「これはなぜ経費にしたのか」と聞かれることがあります。「この食事代は〇〇さんとの打ち合わせのため」など、理由を説明できるようにメモを残しておくと安心です。

③ プライベートとの混在に注意する
「なんとなく経費にしてしまう」のが一番危険です。少しでも迷ったときは、会計事務所や税理士に相談することをおすすめします。

おすすめは「事業用の口座とカードを分ける」

もっとも効果的な対策は、事業用の銀行口座とクレジットカードを個人用と分けることです。これだけで、

  • どれが事業の支出か一目でわかる
  • 会計ソフトへの自動取込がしやすくなる
  • 税務調査で個人口座を見られるリスクが減る

という3つのメリットがあります。記帳の手間も大きく減るので、開業したらまず最初にやっておきたい準備です。

よくある質問

経費を増やせば増やすほど得ですか?

いいえ。1万円の経費を使って減る税金は、税率30%の方で3,000円です。手元のお金は7,000円減っています。「必要なものを正しく経費にする」のが正解で、税金を減らすためだけに使うのは本末転倒です。

一人で食べたランチは経費になりますか?

原則としてなりません。食事は事業をしていなくても必要な支出(家事費)だからです。取引先との会食であれば接待交際費、遠方への出張中の食事であれば旅費に含めて処理できる場合があります。

家族に払った給料は経費になりますか?

生計を一にする親族への支払いは原則として経費になりませんが、青色事業専従者給与の届出をしていれば経費にできます。詳しくは「専従者給与で節税!」をご覧ください。

法人と個人で経費の範囲は違いますか?

基本の考え方は同じですが、法人のほうが範囲は広くなります。たとえば社長への給与(役員報酬)、社宅、出張日当、健康診断などは、法人なら要件を満たせば経費にできます。これが法人化の税務上のメリットのひとつです。

まとめ

  • 判断基準は「売上を得るために必要な支出か」
  • 共用のものは家事按分で使った割合だけ経費にする
  • 保険料・年金などは経費ではなく所得控除で処理する
  • 10万円以上のものは減価償却(青色なら30万円未満まで一括可)
  • 事業用の口座・カードを分けるのが最大の対策

経費の基本的な判断基準は「事業のために必要な支出かどうか」です。迷ったときはこの基準に立ち返ってみてください。

正しく経費を計上することで、余分な税金を払わずに済み、手元に残るお金を増やすことができます。「これは経費になるの?」と思ったら、ぜひ気軽にご相談ください!

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参考

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