在宅で仕事をしている個人事業主の方から「家賃や電気代って経費にできるの?」というご質問をよくいただきます。
答えは「仕事に使った分だけ、経費にできます」。これが家事按分です。
家事按分とは?
家事按分とは、仕事とプライベートの両方で使っている支出を、使用割合に応じて分けることです。仕事に使った割合の分だけ、経費として認められます。
自宅を事務所として使っている個人事業主やフリーランスにとって、節税の基本テクニックのひとつです。
家事按分できる主な経費
| 経費の種類 | 按分の基準 |
|---|---|
| 家賃・地代 | 仕事部屋の面積÷自宅全体の面積 |
| 電気・ガス・水道代 | 仕事部屋の面積÷自宅全体の面積 |
| 通信費(Wi-Fi・スマホ) | 仕事での使用時間や使用頻度 |
| 自動車関連(ガソリン・駐車場) | 仕事での走行距離÷総走行距離 |
按分できないもの
次のような支出は、事業との関連を説明しにくいため、原則として按分の対象になりません。
- 持ち家の住宅ローン元本(利息と減価償却は按分の余地あり)
- ガス代・水道代(業種によっては認められにくい。飲食業・美容業などは可)
- NHK受信料・新聞代(事業に必要と説明できる場合を除く)
- 本人の生命保険料・国民健康保険料(これらは所得控除で処理します)
特に水道・ガス代は、パソコン仕事が中心の方だと「業務でどう使ったのか」を説明しづらく、否認されやすい項目です。
計算方法と具体例
① 家賃・光熱費(面積で按分)
計算式:支出額 × 仕事部屋の面積 ÷ 自宅全体の面積
【例】月額家賃10万円、仕事部屋15㎡、自宅全体50㎡の場合
10万円 × 15 ÷ 50 = 3万円が経費
② 通信費(使用割合で按分)
スマートフォンやインターネット代は、仕事とプライベートの使用割合で分けます。一般的に50〜60%が認められるケースが多いですが、合理的な根拠を持っておくことが大切です。
【例】月額スマホ代1万円、仕事での使用割合50%の場合
1万円 × 50% = 5,000円が経費
③ 自動車(走行距離で按分)
走行記録をつけておき、仕事で走った距離の割合で按分します。
【例】月間走行距離500km、うち仕事200kmの場合
按分割合 = 200 ÷ 500 = 40%が経費
④ 時間で按分する方法もある
専用の部屋がなく、リビングなどで仕事をしている場合は、使用時間で按分する方法もあります。
【例】1日8時間・週5日勤務の場合
週の労働時間 40時間 ÷ 週168時間 = 約24%
面積と時間を組み合わせる方法(面積割合 × 時間割合)もありますが、割合が小さくなりすぎることもあります。自分の働き方に合った、説明しやすい基準を選ぶのがポイントです。
仕訳の書き方
家事按分の仕訳には、2つのやり方があります。
A:支払いのつど按分する
家賃10万円を個人口座から支払い、30%を経費にする場合
(借方)地代家賃 30,000 / (貸方)事業主借 100,000
(借方)事業主貸 70,000
B:年末にまとめて調整する
期中は全額を経費に計上しておき、決算時に事業用以外の部分を差し引く方法です。
(借方)事業主貸 840,000 / (貸方)地代家賃 840,000
会計ソフトを使うならBのほうが手間が少ないことが多いです。どちらでも結果は同じなので、続けやすい方法を選びましょう。
按分割合を決めるときの3つのポイント
① 合理的な根拠を持つ
「なんとなく50%」ではなく、面積・時間・距離など客観的な数字をもとに計算しましょう。
② 記録を残しておく
税務調査があったときに説明できるよう、間取り図・走行記録・使用時間のメモなどを保存しておくことをおすすめします。
③ 高すぎる割合に注意
実態に合わない高い割合(例:家賃の90%を経費にするなど)は、税務署から否認されるリスクがあります。実情に合った合理的な割合を設定しましょう。
残しておきたい資料
- 間取り図に仕事スペースを書き込んだもの(面積按分の根拠)
- 賃貸借契約書(家賃と専有面積の確認)
- 仕事スペースの写真
- 走行距離の記録(日付・訪問先・距離)
- 按分割合の計算メモ
間取り図に線を引いて面積を書き込んだ紙が1枚あるだけで、説明のしやすさが大きく変わります。
持ち家の場合はどうなる?
持ち家でも家事按分はできますが、賃貸とは対象が異なります。
| 項目 | 按分できるか |
|---|---|
| 住宅ローンの元本 | × |
| 住宅ローンの利息 | ○ |
| 建物の減価償却費 | ○ |
| 固定資産税 | ○ |
| 火災保険料 | ○ |
| 修繕費 | ○(事業用部分) |
⚠️ 注意点:住宅ローン控除を受けている場合、事業用の割合が大きいと控除額が減ることがあります。事業割合が50%を超えると住宅ローン控除が受けられなくなるため、持ち家の方は慎重な判断が必要です。
よくある質問
Q. 仕事専用の部屋がなくても按分できる?
できます。リビングの一角を仕事スペースとして使っている場合でも、使用面積や時間で按分することが可能です。ただし、専用スペースに比べると割合は低めになります。
Q. 按分割合は毎年変えてもよい?
変えることは可能ですが、毎年大きく変動すると不自然に見えます。引っ越しや働き方の変化など、理由がある場合は問題ありません。
Q. 実家に住んでいて家賃を払っていない場合は?
実際に支払っていない以上、経費にはできません。家族に家賃を払っている場合も、生計を一にする親族への支払いは原則として経費になりません(ただし、その親族が負担した固定資産税などは経費にできる場合があります)。
Q. 法人でも家事按分はできる?
法人の場合は「家事按分」ではなく、社宅制度を使うのが一般的です。詳しくは「社宅制度を活用した節税」をご覧ください。
まとめ
- 家事按分とは、仕事とプライベートで共用する支出を使用割合で分けて経費にすること
- 家賃・光熱費は面積、通信費は使用割合、車は走行距離で按分するのが一般的
- 合理的な根拠と記録が大切。高すぎる割合は税務署から否認されることも
- 持ち家はローン利息・減価償却費・固定資産税が対象。住宅ローン控除への影響に注意
- 適切に活用すれば、在宅ワークの個人事業主には大きな節税効果があります
「うちの場合、何%くらいが適正?」と迷ったら、お気軽にご相談ください。



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