飲食料品の消費税率を1%に引下げへ|2027年4月開始の法案の内容と事業者の準備【法案成立前】

飲食料品の消費税率を1%に引下げへ|2027年4月開始の政府方針 法人向け

令和9年(2027年)4月1日から2年間、現在8%の軽減税率が適用されている飲食料品の消費税率を1%に引き下げる法案が、令和8年10月9日に閣議決定され、国会に提出されました。

令和8年8月5日の政府の基本方針、9月15日の大綱の閣議決定を経て、国税庁からは事業者向けのQ&Aとパンフレットも公表されています。ただし、法案はまだ国会で審議中で、成立した法律ではありません。

消費者にとっては買い物の負担が軽くなる話ですが、事業者にとっては、消費税の納付額が大きく変わる改正です。しかも、業種によって有利にも不利にもなります。この記事では、法案の内容と、事業者が準備すべきことを整理します。

※ 本記事は令和8年10月11日時点の情報です。大綱と国税庁のQ&A(令和8年9月)に基づいていますが、法案が成立しなかった場合や、国会で修正された場合は内容が変わります。

法案の内容:飲食料品の税率を1%へ

項目内容
対象軽減税率(8%)の対象となっている飲食料品(酒類・外食を除く)
税率8% → 1%(消費税0.78%+地方消費税0.22%)
期間令和9年(2027年)4月1日〜令和11年(2029年)3月31日の2年間
経緯令和8年8月5日 基本方針の閣議決定 → 9月15日 大綱の閣議決定 → 10月9日 法案の閣議決定・国会提出

この引下げは、「給付付き税額控除」という新しい給付制度が始まるまでのつなぎの措置と位置づけられています。税率の引下げとあわせて、所得に応じた「就業者負担軽減支援金」の給付も行う仕組みです。

1%になるもの・ならないもの

対象は「軽減税率の対象となっている飲食料品」です。現在の軽減税率の区分がそのまま使われるため、線引きは今と同じです。

区分現在令和9年4月以降
飲食料品(持ち帰り・宅配など)8%1%
酒類10%10%(変わらず)
外食(店内飲食)10%10%(変わらず)
ケータリング・出張料理10%10%(変わらず)
新聞(週2回以上発行・定期購読)8%8%のまま
上記以外のすべて10%10%(変わらず)

見落としやすいのが新聞です。新聞も現在は軽減税率8%の対象ですが、今回の引下げの対象外で、8%のままです。そのため令和9年4月からは、1%・8%・10%の3つの税率が同時に存在することになります。

また、同じ食べ物でも「店内で食べる」なら10%、「持ち帰る」なら1%という差は残ります。現在の8%と10%の差より開きが大きくなるため、店頭での案内はより丁寧さが求められそうです。

事業者に何が起きるか

ここからが本題です。消費税は「売上で受け取った消費税 - 仕入や経費で支払った消費税」を計算して、その差額を国に納めるしくみです。売上と仕入で税率が違うと、この差額が大きく動きます。

以下の例で出てくる金額は、すべて消費税の金額です。売上や利益そのものの金額ではないことにご注意ください。

食料品店・食品製造業などは「還付」になる可能性

飲食料品を売る事業者は、売上の税率が1%に下がる一方、家賃・水道光熱費・車両費などの経費は10%のままです。その結果、支払った消費税のほうが多くなり、納付ではなく還付になるケースが出てきます。

ただし、食料品店なら必ず還付になるわけではありません。給与や人件費は仕入税額控除の対象にならないため、経費に占める人件費の割合が高い事業者では、思ったほど控除額が増えません。粗利益率、仕入の構成、在庫の状況によっては、引下げ後も納付が生じます。

【例】食料品店(本則課税)

年間の売上が1,000万円、仕入が700万円、その他の経費が200万円(いずれも税抜)の食料品店で計算してみます。表の中の金額は、それぞれにかかる消費税の額です。

※ 以下は、税抜価格が変わらず、課税売上割合が100%で、すべての仕入れについて仕入税額控除の要件を満たすものとした単純な試算です。税額は地方消費税を含む合計(1%・8%・10%)で計算し、端数処理、棚卸資産、非課税売上などは考慮していません。

消費税の計算現在(飲食料品8%)引下げ後(飲食料品1%)
売上 1,000万円(飲食料品)にかかる消費税80万円10万円
仕入 700万円(飲食料品)で支払った消費税△56万円△7万円
経費 200万円(10%対象)で支払った消費税△20万円△20万円
消費税の納付税額(△は還付)4万円△17万円

ここでいう「納付税額」は消費税として納める金額であり、利益とは別のものです。この例の利益は 1,000万円 − 700万円 − 200万円 = 100万円です。

税抜価格が変わらないと仮定すれば、税率が変わっても税抜の利益そのものは変わりません。変わるのは、そこに上乗せして預かった消費税の精算結果です。ただし、税込の販売価格を据え置く場合や、仕入先が税込価格を変更しない場合は、本体価格が動くため利益にも影響します。

消費税を4万円納めていた状態から、17万円が戻ってくる状態へ。手元の資金は21万円変わります。今回の改正では、免税事業者や簡易課税の事業者が還付を受けられるよう、届出の特例も設けられます(後述)。

飲食店は逆に「納付が増える」可能性

注意が必要なのは飲食店です。売上(店内飲食)は10%のままなのに、食材の仕入だけが1%に下がります。差し引ける消費税が減るため、納付額はむしろ増えます。

【例】飲食店(本則課税)

年間の売上が1,000万円(すべて店内飲食)、食材の仕入が300万円、その他の経費が200万円(いずれも税抜)の飲食店で計算してみます。こちらも表の金額は消費税の額です。

消費税の計算現在(飲食料品8%)引下げ後(飲食料品1%)
売上 1,000万円(外食10%)にかかる消費税100万円100万円
食材仕入 300万円(飲食料品)で支払った消費税△24万円△3万円
経費 200万円(10%対象)で支払った消費税△20万円△20万円
消費税の納付税額56万円77万円

売上は変わらないのに、納める消費税だけが21万円増えます。食材を安く仕入れられるようになったわけではなく、差し引ける消費税が減っただけだからです。閣議決定に「外食産業を含めて、影響を見極めた上で……資金繰り支援等のための予算措置を検討する」と書かれているのは、この点への手当てと考えられます。

テイクアウトの比率が高い店は、売上の一部が1%になるため影響が緩和されます。自店の売上構成を確認しておくことが大切です。

免税事業者・簡易課税の事業者は見直しが必要

還付が出るということは、これまで有利だった選択が逆転するかもしれないということです。

現在の立場令和9年4月以降に起こり得ること
免税事業者そのままでは還付を受けられない。課税事業者になったほうが有利になる可能性がある
簡易課税還付は受けられない。ただし、特例により飲食料品の販売分の納税額は実質ゼロになる
本則課税還付を受けられる。ただし還付申告の事務が増える

先ほどの食料品店の例で比べてみます。

引下げ後の計算方法消費税の納付税額(△は還付)
本則課税△17万円(17万円が戻る)
簡易課税(今回の特例を適用)0円

簡易課税のままでも納税額はゼロになりますが、本則課税にすれば17万円の還付を受けられます。一方で、本則課税はインボイスの保存や還付申告の事務が必要です。また、免税事業者は現在、受け取った消費税相当額を納めていません。還付の見込額だけでなく、事務負担や2年後に税率が戻ったときの影響もあわせて判断しましょう。

大綱で示された特例

9月15日に閣議決定された大綱では、税率の引下げにあわせて次の特例が設けられることになりました。国税庁のQ&Aでも、具体的な取扱いが示されています。

① 届出期限の特例(課税期間の途中でも提出できる)

消費税の届出は、原則として適用を受けたい課税期間が始まる前の日までに提出する必要があります。今回の改正では、飲食料品の販売を行う事業者について、次の特例が設けられます。

やりたいこと届出書特例による提出時期
免税事業者が課税事業者になる消費税課税事業者選択届出書令和9年4月1日を含む課税期間中に提出すれば、その課税期間から課税事業者
簡易課税をやめて本則課税に戻る消費税簡易課税制度選択不適用届出書令和9年4月1日を含む課税期間中に提出すれば、その課税期間から本則課税

どちらも、届出書の「参考事項」欄に「飲食料品特例」と記載します。国税庁のQ&Aでは、法案が成立した場合、これらの届出書は令和9年4月1日前でも提出できるようになる予定とされています。

つまり、個人事業主や12月決算法人でも、令和8年12月31日までに慌てて届出を出す必要はありません。法案の成立を確認してから判断できます。

ただし、効力が始まるのは課税期間の初日からです。個人事業主や12月決算法人なら令和9年1月1日から課税事業者・本則課税となり、1月〜3月の飲食料品の販売は8%で申告します。4月1日から課税事業者になりたい免税事業者は、インボイス登録の経過措置を使い、令和9年3月17日までに登録希望日を4月1日とした登録申請書を提出する方法もあります(インボイスの交付義務がかかります)。

② 簡易課税の2年縛りを適用しない

簡易課税は、原則として2年間は継続して適用しなければなりません。今回の改正では、飲食料品の販売を行う簡易課税の事業者について、令和9年4月1日を含む課税期間は、この2年縛りを適用しないこととされます。最近簡易課税を選んだ事業者でも、本則課税に戻れます。

③ 簡易課税の計算の特例

簡易課税で申告する場合、業種区分にかかわらず、飲食料品の販売(1%対象)に係る売上税額と同じ額を仕入税額として控除できます。飲食料品の販売分の納税額は実質ゼロになります。2割特例・3割特例を使う場合も同様です。

④ 中間申告の特例

前年の8%の税額をもとに中間納付すると、税率引下げ後は納めすぎになります。そこで、前年の飲食料品の売上げ・仕入れに1%を当てはめて計算し直した税額に基づいて中間申告できる特例が設けられます。税率が8%に戻るとき(令和11年4月以後)にも、同様の特例があります。

⑤ 総額表示義務の特例

値札の貼り替えなどが間に合わない具体的な事情がある場合、実際の支払額と誤認させない掲示などを条件に、飲食料品について令和9年2月1日〜3月31日は税率1%による税込価格の先行表示、4月1日〜5月31日は税率8%による税込価格の継続表示が認められます。税率が8%に戻るときも同様で、令和11年2月1日〜3月31日は8%による先行表示、4月1日〜5月31日は1%による継続表示が認められます。好きな税率の表示を選べる制度ではありません。

⑥ 経過措置(4月以後も8%になる取引)

過去の税率引上げのときのような工事の請負などの経過措置はなく、次の2つに限られます。

  • 令和9年1月1日前に契約し、4月1日前に代金を受け取っている定期供給契約(食材の定期便など)
  • 令和9年1月1日前に販売条件を提示し、4月1日前に申込みを受けた通信販売(お中元のカタログ販売など)

契約書やカタログに「税率1%に変わった場合は〇〇円」などと定めていれば、4月以後は1%になります。経過措置・請求書の書き方・レジや価格表示の準備は「消費税率が1%に下がるときの実務対応|経過措置・請求書・レジのチェックリスト」で詳しくまとめています。

課税事業者を選ぶと2年間は戻れません

特例を使って課税事業者を選んだ場合でも、事業を廃止した場合を除き、原則として2年間は免税事業者に戻れません。たとえば令和9年に課税事業者を選んだ個人事業主は、令和9年・令和10年は課税事業者です。令和11年から免税事業者に戻るには、令和10年中に「課税事業者選択不適用届出書」を提出します。

さらに、課税事業者となってから2年以内に調整対象固定資産(税抜100万円以上の建物・機械・車両・備品など)を取得して本則課税で申告すると、原則として3年間は免税事業者に戻れず、簡易課税も選べません。設備投資の予定がある場合は特に注意が必要です。

いま準備しておきたいこと

1. 自社の売上と仕入の構成を確認する

売上のうち飲食料品がどれくらいか、仕入のうち飲食料品がどれくらいかを把握しておきます。この2つの比率で、有利・不利がおおむね見えてきます。

  • 売上も仕入も飲食料品が中心(食料品店・食品製造業など)→ 還付になる可能性がある(ただし人件費の割合が高いと納付が残ることも)
  • 売上は10%・仕入に飲食料品が多い(飲食店など)→ 本則課税だと納付が増えやすい
  • 飲食料品を扱っていない → 影響はほとんどない

2. 免税・簡易課税・本則課税の有利判定をしておく

届出期限の特例があるので、法案の成立を確認してから届出を出せば間に合います。法案が成立する前に届出を出すと、改正が実施されなかった場合でも届出の効力だけが残ってしまうおそれがあります。いまは試算と判断材料の準備を進めておきましょう。

なお、簡易課税を新たに選ぶ届出には特例がありません。本則課税の飲食店などが、令和9年分から簡易課税を選ぶ場合は、原則どおり令和8年12月31日(個人事業主・12月決算法人の場合)までの提出が必要です。

3. レジ・会計システムの対応を確認する

1%・8%・10%の3つの税率に対応できるか、メーカーやベンダーに早めに確認しておきましょう。軽減税率の導入時も、対応が集中して間に合わない事業者が出ました。

4. 価格表示の見直しを検討する

値札・メニュー・ネットショップの表示をどう変えるか、方針を決めておきます。総額表示義務は、事業者が消費者に対してあらかじめ表示する価格が対象です。店頭の値札、チラシ、広告、メニューなどでは、原則として税込価格の表示が必要です。上記⑤の特例も確認しておきましょう。

よくある質問

本当に実施されるのですか?

法案は閣議決定を経て国会に提出されていますが、成立するまでは確定ではありません。国会での審議の結果、修正される可能性もあります。

2年後にはまた8%に戻るのですか?

2年間の措置とされており、令和11年4月1日に8%に戻ります。その後は「給付付き税額控除」に引き継ぐ形が想定されています。税率が戻るときにも、同じような事務対応が必要になります。

飲食料品を扱っていなければ関係ありませんか?

納税額への影響はほとんどありません。ただし、会議用のお茶やお菓子、来客用の飲み物、贈答用の食品など、経費のなかに飲食料品が含まれることはあります。会計ソフトの税率設定は確認しておきましょう。

インボイスの記載はどうなりますか?

適用税率1%と、1%で計算した消費税額等を記載します。それ以外の記載事項は変わりません。「軽減税率の対象品目である旨」を記載していれば、「税率1%の対象品目である旨」を新たに書く必要はないとされています。

いま何かしておくべきことはありますか?

飲食料品を扱っている場合は、顧問税理士に「うちは有利になるか不利になるか」を相談し、試算をしておきましょう。課税事業者の選択や簡易課税をやめる届出は、特例により令和9年4月1日を含む課税期間中に出せばよいので、法案の成立を確認してからで間に合います。

まとめ

  • 令和9年4月1日から2年間、飲食料品の消費税率を8%から1%に引き下げる法案が国会に提出された(令和8年10月9日 閣議決定)。まだ成立していない
  • 酒類・外食は10%、新聞は8%のまま。1%・8%・10%の3つの税率が同時に存在する
  • 食料品店・食品製造業などは還付になる可能性。飲食店は本則課税だと納付が増える可能性
  • 課税事業者の選択・簡易課税をやめる届出は、令和9年4月1日を含む課税期間中の提出でよい特例あり。簡易課税の2年縛りも外れる
  • 簡易課税のままなら、飲食料品の販売分は実質ゼロ。還付を受けたいなら本則課税
  • 中間申告・総額表示の特例、定期供給契約・通信販売の経過措置もある
  • 課税事業者を選ぶと2年間は戻れない。届出は法案成立後に判断を

影響の大きさは、売上と仕入に飲食料品がどれだけ含まれるかで決まります。「うちはどうなるのか」が気になる方は、お気軽にご相談ください。


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参考

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