取引先へのお祝い金、従業員のご家族への香典、入院された方へのお見舞金。こうした慶弔費は経費にできますが、相手が誰かによって勘定科目が変わり、税務上の扱いも異なります。この記事では、慶弔費の区分と相場、実務での注意点をわかりやすく解説します。
まず押さえる|相手が誰かで勘定科目が変わる
| 相手 | 勘定科目 | 税務上の扱い |
|---|---|---|
| 役員・従業員とその親族 | 福利厚生費 | 規程などの合理的基準に基づき、社会通念上相当なら損金算入・本人非課税 |
| 取引先などの社外の人 | 交際費 | 事業関係者への慶弔費は交際費。法人規模などにより損金算入制限あり |
同じ「お祝い金」でも、社内向けなら福利厚生費、社外向けなら交際費になるのが基本です。交際費には損金算入の上限があるため、区分を間違えると税額に影響します。
従業員向け|福利厚生費にするための要件
役員・従業員への慶弔金を福利厚生費として処理するには、次の要件を満たす必要があります。
- 慶弔見舞金規程などの一定の基準があること:誰にいくら支給するかを社内ルールで定めておく
- 合理的な支給基準が公平に適用されること:慶弔事由、役職、勤続年数、親族関係、被害の程度などに応じた基準を設け、同じ条件の人には同じ基準を適用します(全員が同額である必要はありません)
- 金額が社会通念上相当であること:地位や事情に照らして常識的な範囲
慶弔金は現金で支給しても福利厚生費として認められる数少ない例です。通常、現金支給は給与課税されますが、慶弔見舞金は規程にもとづく社会通念上相当な額であれば非課税として扱われます。
なお、慶弔見舞金規程がないことだけで直ちに給与課税されるわけではありませんが、支給基準の公平性や金額の妥当性を説明するため、あらかじめ規程を整備しておくことが重要です。逆に、規程がなく社長の一存で高額を支給した場合や、特定の人だけに支給した場合は、給与として課税されるおそれがあります。福利厚生費全般の判断基準は「福利厚生費とは?経費にできる範囲と給与課税との分かれ目」もあわせてご覧ください。
金額の目安(一般的な相場)
法律で決まった金額はありませんが、規程を作る際の一般的な目安は次のとおりです。
| 項目 | 従業員向けの目安 |
|---|---|
| 結婚祝金 | 1〜3万円程度 |
| 出産祝金 | 1〜2万円程度 |
| 弔慰金(従業員本人が死亡した場合の遺族への支給) | 5〜10万円程度 |
| 香典(親族) | 5,000円〜2万円程度 |
| 傷病見舞金 | 5,000円〜1万円程度 |
| 災害見舞金 | 被害の程度に応じて |
※上記は社内規程を作成する際の一般的な参考例であり、税法上の非課税限度額ではありません。役職、勤続年数、会社規模、地域の慣習、従業員との関係などを踏まえて、社会通念上相当かどうかを個別に判断します。
死亡弔慰金が高額になる場合は相続税にも注意
従業員や役員が死亡した際の弔慰金が高額になる場合は、相続税上の扱いも関係します。業務上の死亡は普通給与の3年分、業務外の死亡は6か月分が弔慰金として扱われる目安で、超過部分は死亡退職金(退職手当金等)として相続税の課税対象とされる場合があります。
取引先向け|交際費になるが例外もある
取引先の社長のご葬儀に包む香典、取引先の周年記念のお祝いなどは交際費です。中小法人は年800万円まで全額損金にできますが、枠を超える部分は損金になりません。
取引先やその役員・従業員に対し、取引関係の維持・円滑化を目的として支出する慶弔費は、原則として交際費になります。一方、会社の事業と関係のない団体・個人への支出は寄附金、役員の個人的な交際に会社が負担したものは役員給与と判断される可能性があります。
「誰に」「なぜ」渡したのかを説明できるようにしておきましょう。
交際費の詳しい仕組みは「交際費を経費にする方法と中小企業の特例」をご覧ください。
領収書がない慶弔費の証拠の残し方
香典やお祝い金は、領収書がもらえないのが実務上の悩みどころです。次のような資料を残しておけば、支出の証明になります。
- 会葬礼状・案内状(日付と相手先がわかる)
- 結婚式の招待状
- 出金伝票(日付・金額・相手先・目的を記載)
- ご祝儀袋・不祝儀袋のコピーや、支給簿への記録
税務調査では「本当に支出したのか」が確認されます。出金伝票だけでなく、案内状などの客観的な資料を一緒に保管しておくと安心です。
消費税は原則「課税対象外」
香典・祝金・見舞金などの金銭支給は、商品やサービスの対価ではないため、消費税の課税対象外となり、仕入税額控除はできません。
一方、会社がお供物・花輪・贈答品などを購入して贈る場合、その購入費は原則として課税仕入れになります。金銭を渡す場合と、物品を購入して贈る場合とで消費税の処理が異なります。
まとめ
- 従業員・役員とその親族向けは福利厚生費、取引先向けは交際費
- 福利厚生費にするには合理的な支給基準・その公平な適用・社会通念上相当な金額が必要(全員同額である必要はない)
- 金額の相場は税法上の非課税限度額ではない。高額な死亡弔慰金は相続税上の扱いにも注意
- 慶弔金は現金支給でも非課税として扱われる例外的な項目
- 領収書がないため、案内状や出金伝票で記録を残す
- 金銭の慶弔費は消費税の課税対象外。物品を購入して贈った場合は課税仕入れ



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