社員の健康診断や社員旅行、慶弔金などにかかった費用は福利厚生費として経費にできます。しかし要件を外れると「給与」として扱われ、本人に所得税がかかることがあります。この記事では、福利厚生費として認められる範囲と、給与課税との分かれ目をわかりやすく解説します。
福利厚生費とは
福利厚生費とは、役員・従業員の福利厚生のために会社が負担する費用です。会社の経費になり、かつ受け取る側にも所得税がかからない点が大きなメリットです。給与として支給すると本人に所得税・住民税・社会保険料がかかりますが、福利厚生費ならその負担がありません。
福利厚生費と認められる3つの条件
- 対象者に公平性があること(機会均等):役員や特定の人だけが受けられるものは給与扱いになりやすい
- 金額が社会通念上、常識的な範囲であること:高額すぎると給与とみなされる
- 原則として現金による給与の代替でないこと:現金や換金性の高いものを渡すと、原則として給与になる(慶弔見舞金など一部例外あり)
特に「対象者に公平性があるか」は最重要ポイントです。原則として、全従業員に利用の機会が与えられていることが重要です。ただし、一定年齢以上を対象とする健康診断や、支店・事業所単位で実施する行事など、合理的な基準による区分まで否定されるわけではありません。
一方、役員だけ、または特定の人だけを対象とした経済的利益は、福利厚生費ではなく給与と判断されやすくなります。特に役員一人だけの会社では、従業員全体の福利厚生という説明が難しいため、慎重な判断が必要です。
主な項目と判断の目安
| 項目 | 福利厚生費になる目安 | 給与課税になる例 |
|---|---|---|
| 健康診断 | 全従業員または一定年齢以上の希望者全員を対象とし、会社が医療機関へ直接支払い、一般的な検診として費用も相当であること | 役員だけを対象とする高額な人間ドック/本人に現金支給 |
| 社員旅行 | 4泊5日以内・参加割合50%以上が原則的な目安。全従業員に参加機会があり、費用や内容が社会通念上相当であること | 不参加者に金銭を支給/高額すぎる旅行 |
| 食事補助 | 本人が食事価額の半分以上を負担し、会社負担額が月額7,500円(消費税等を除く)以下 | 会社が全額負担/現金で支給 |
| 慶弔見舞金 | 規程にもとづき、社会通念上相当な金額 | 規程がなく高額/特定の人だけ |
| 忘年会・懇親会 | 全従業員に参加機会があり、費用が社会通念上相当な社内行事 | 役員・特定の従業員だけの飲食/不参加者だけに代替の現金を支給 |
給与課税されるとどうなる?
福利厚生費のつもりで処理していたものが税務調査で給与と判断されると、次のような影響があります。
- 本人に所得税・住民税がかかる(会社は源泉徴収漏れとして不足税額を納付)
- 社会保険料の対象になることがある
- 役員に対するものは定期同額給与に該当せず、法人税法上の損金にならないことがある
特に3つ目は影響が大きく、役員向けの経済的利益は「会社の経費にもならず、本人には課税される」という二重の不利になりかねません。
実務で押さえたい3つのポイント
- 社内規程を作る:慶弔見舞金規程・旅費規程などがあると、金額の妥当性を説明しやすくなります
- 会社が直接支払う:本人に現金を渡すのではなく、会社が業者へ直接支払う形にします
- 記録を残す:社員旅行の参加者名簿、行事の案内など、全員が対象だった証拠を保管します
まとめ
- 福利厚生費は会社の経費になり、本人にも課税されないのがメリット
- 認められる基本条件は、①対象者に公平性があること ②金額が社会通念上相当であること ③原則として現金による給与の代替でないこと
- 要件を外れると給与課税となり、役員の場合は損金にもならないことがある
- 規程の整備と記録の保管が最大の防御策
食事補助の具体的な要件は「食事支給の非課税限度額が月7,500円に引き上げ」、社宅については「社宅制度を活用した節税」もあわせてご覧ください。


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