2025年10月にポイント還元が禁止されたふるさと納税ですが、見直しはこれで終わりではありません。
2026年10月からは「寄附金活用可能額」の基準が導入され、2027年の寄附分からは高所得者の控除に上限が設けられます。
この記事では、令和8年度税制改正で成立した内容と、総務省の指定基準の改正をもとに、今後の変更点を整理します。
変更の全体像
| 時期 | 変更内容 | 影響を受ける人 |
|---|---|---|
| 2025年10月 | ポイント付与を行う者を通じた募集を禁止 | 全員 |
| 2026年10月 | 寄附金活用可能額の基準を導入(段階的に60%へ) | 全員(間接的) |
| 2026年10月 | 地場産品基準などの厳格化 | 全員(間接的) |
| 2027年の寄附分〜 | 特例控除額に上限(最大193万円) | 高所得者 |
順に見ていきます。
2026年10月|寄附金の6割を自治体の財源に
今回の見直しの中心はここです。
現状:寄附の半分近くが経費に消えている
総務省の資料によると、令和6年度のふるさと納税の受入額は1兆2,728億円。その内訳は次のとおりです。
| 項目 | 金額 | 割合 |
|---|---|---|
| 返礼品 | 3,208億円 | 25.2% |
| 送付・広報・決済 | 1,017億円 | 8.0% |
| 事務費等 | 1,676億円 | 13.2% |
| 地方団体の財源 | 6,826億円 | 53.6% |
募集費用は実績で46.4%。現在の上限は5割ですので、その上限近くまで使われている状況です。
令和8年度税制改正大綱では、ポータルサイト事業者への手数料等が1,656億円と、寄附受入額の13%に達していることが問題視されています。
改正後:4年かけて60%以上へ
改正では、寄附金活用可能額(寄附金のうち自治体が活用できる財源)の割合を60%以上とする基準が設けられます。
ただし一度にではなく、段階的に適用されます。
| 指定 | 寄附金活用可能額の割合 | 裏返せば募集費用は |
|---|---|---|
| R7指定(現在) | 50.0% | 50%まで |
| R8指定(2026年10月〜) | 52.5% | 47.5%まで |
| R9指定(2027年10月〜) | 55.0% | 45%まで |
| R10指定(2028年10月〜) | 57.5% | 42.5%まで |
| R11指定(2029年10月〜) | 60.0% | 40%まで |
毎年2.5%ずつ引き上げられ、2029年10月からは自治体が使える財源が6割以上になります。あわせて、寄附金の使途の公表も求められます。
返礼品の3割ルールは変更されません。自治体には、ポータルサイト手数料、広報費、事務委託費、送料などを含む募集費用全体の見直しが求められます。
寄附する側への影響
自治体が使える経費が減るため、次のような変化が起こり得ます。
- 利用するポータルサイトを絞る自治体が出てくる
- 返礼品の配送方法や内容を見直す自治体が出てくる
ただし返礼品そのものの3割ルールは維持されますので、返礼品の中身が一気に薄くなるわけではありません。
2027年の寄附分〜|控除に上限ができる
こちらは高所得者に直接影響する改正です。
これまでは上限がなかった
ふるさと納税の控除は、次の3つで構成されます。
- 所得税の所得控除
- 住民税の税額控除(基本分)
- 住民税の税額控除(特例控除分)← ここに上限が入ります
このうち特例控除額は、住民税所得割額の2割を限度としつつ、所得が高いほど上限なく増える仕組みでした。
改正後:193万円が上限に
令和8年度税制改正により、特例控除額に定額の上限が設けられました。改正後の特例控除額は、「住民税所得割額の20%」と「定額上限」のいずれか低い金額が限度になります。
定額上限は、道府県民税77万2,000円・市町村民税115万8,000円の合計193万円です(指定都市はそれぞれ38万6,000円・154万4,000円で、合計は同じ193万円)。
総務省資料に示された、給与収入別の目安です。寄附上限額は現行制度における金額である点にご注意ください。
| 給与収入 | 現行制度における寄附上限額の目安 | 特例控除額 | 改正の影響 |
|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 18万円 | 12万円 | なし |
| 2,000万円 | 57万円 | 32万円 | なし |
| 5,000万円 | 211万円 | 93万円 | なし |
| 1億円 | 438万円 | 193万円 | ここが上限 |
| 3億円 | 1,346万円 | 593万円 → 193万円 | あり |
| 5億円 | 2,254万円 | 993万円 → 193万円 | あり |
| 10億円 | 4,524万円 | 1,993万円 → 193万円 | あり |
※独身または夫婦共働き(給与収入のみ、住宅ローン控除等なし)をモデルとした推計です。
⚠️ 重要:表の寄附上限額は現行制度のものです。令和9年分の寄附からは、特例控除額が上限に達した後に寄附額を増やしても、原則として自己負担2,000円には収まりません。高所得者の実質的な寄附上限額は、改正後の制度で再計算する必要があります。
一定のモデルケースでは、給与収入約1億円が影響の分かれ目とされています。ただし、実際には所得の種類、家族構成、所得控除、住宅ローン控除などによって異なります。
特例控除額が上限に達した後も、所得税の寄附金控除と住民税の基本控除は一定範囲で受けられます。ただし、特例控除で補われない部分が生じるため、自己負担は2,000円を超えます。寄附額そのものに上限が設けられるわけではありません。
適用は2027年(令和9年)の寄附分から
2026年中の寄附には影響しません。住民税は前年の所得をもとに計算されるため、実際に控除額が変わるのは2028年度の住民税からです。
2026年10月|返礼品のルールも厳格化
あわせて、返礼品に関する基準も見直されます。主なものは次の3つです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 広報目的基準の明確化 | ロゴを付けただけのグッズを制限。自治体が広報目的で配布・販売した実績数量を超えて提供できない |
| 調達費用の妥当性確保 | 合理的な理由なく一般販売価格より高額で調達しないこと |
| 付加価値基準の明確化 | 「価値の過半が区域内で生じた」ことを価格ベースで算出し、証明・公表 |
総務省の資料では、輸入価格6万円のワインを自治体へ12万円で納品し、その差額を「区域内で生じた付加価値」と説明している疑いのある事例が挙げられています。
こうした返礼品は姿を消す可能性がありますが、裏を返せば地域で本当に作られた返礼品が中心になるということでもあります。
変わらないこと
| 項目 | 変更 |
|---|---|
| 自己負担2,000円の仕組み | 変更なし |
| 返礼品の3割ルール | 変更なし |
| ワンストップ特例制度 | 変更なし |
| 控除の上限額(一般的なモデルの場合) | 影響しない見込み |
一般的な所得の方にとって、控除の仕組みは変わらない見込みです。変わるのは返礼品のラインナップや自治体の募集方法といった「周辺」の部分です。
今、何をすべきか
一般的な所得の方
特に対策は不要な見込みです。これまでどおり、控除上限額の範囲内で寄附してください。
欲しい返礼品が今回の見直しで対象外になりそうなものであれば、早めに寄附しておくという判断はあり得ます。ただし上限を超えた分は自己負担になりますので、慌てて寄附額を増やすのは避けてください。
特例控除額が上限に達する可能性がある方
2026年中の寄附には上限が適用されません。大口の寄附を予定されている場合、2026年内に実行するかどうかで控除額が変わる可能性があります。
ご自身が上限に達するかどうかは、所得の種類や控除の内容によって変わります。実際の申告内容をもとに試算することをおすすめします。
ただし、その年の所得が確定しないと正確な上限額は計算できません。年末近くに試算したうえで判断するのが安全です。
個人事業主の方
所得が年末まで確定しないため、前年並みの所得を前提に、余裕をもった金額にしておくのが安全です。控除の仕組みは「個人事業主のふるさと納税完全ガイド」をご覧ください。
決済完了日にご注意を
ふるさと納税の控除判定は、原則として寄附金を支払った年で行います。年末に申し込んでも、決済が翌年になった場合は翌年分になることがあります。12月に寄附される場合は、決済完了日を必ず確認してください。
よくある質問
私の控除上限額は下がりますか?
一般的なモデルでは、給与収入約1億円が分かれ目とされています。それを下回る方は影響しない見込みです。ただし、所得の種類や所得控除の状況によって変わりますので、断定はできません。ご不安な場合はご相談ください。
返礼品の還元率は下がりますか?
返礼品の調達費を寄附額の3割以下とする基準は変わりません。ただし、送料や決済手数料を含めた総額の枠が狭まるため、送料の高い返礼品は見直される可能性があります。
なぜ見直されるのですか?
令和8年度税制改正大綱では、「税制上の控除を利用して集められたふるさと納税の寄附は、まさに公金」であり、区域外に流出する事業者への手数料等はできる限り縮減する必要がある、とされています。
制度自体がなくなることはありますか?
現時点でそのような方針は示されていません。今回の見直しは、制度本来の趣旨に立ち返ることを目的としたものです。
まとめ
- 2026年10月から、寄附金活用可能額の割合が52.5%に。2029年10月に60%まで段階的に引き上げ
- 削られるのは主にポータルサイト手数料や広報費。返礼品の3割ルールは維持
- 2027年の寄附分から、特例控除額は「住民税所得割額の20%」と「193万円」の低いほうが上限に
- 上限に達した後も基本分の控除は受けられるが、自己負担は2,000円を超える
- あわせて地場産品基準なども厳格化
- 一般的なモデルでは給与収入約1億円が分かれ目。所得構成により異なるため個別の試算が必要
制度がなくなるわけではありません。内容を理解したうえで、上限額の範囲で計画的に活用してください。ご不明な点があればお気軽にご相談ください。



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