令和8年度税制改正では、防衛費増額の財源確保を目的として、個人の所得税に対する新しい付加税「防衛特別所得税」が創設されます。令和9年(2027年)以後の所得税から適用されます。
当ブログでは以前、法人向けの「防衛特別法人税」を解説しました。今回はその個人版となる「防衛特別所得税」について、仕組みと実際の影響をわかりやすく解説します。
防衛特別所得税とは
防衛特別所得税は、基準所得税額に対して税率1%を乗じて計算する付加税です。基準所得税額とは、通常の所得税額を基礎として計算した金額のことで、一般的には「所得税額に1%が上乗せされる」イメージです。
たとえば、所得税が100万円の方であれば、追加で1万円(100万円×1%)が課税されます。
ポイントは、「所得」ではなく「所得税額」に対してかかるという点です。所得税がゼロの方には、防衛特別所得税もかかりません。
復興特別所得税との関係
現在、所得税には「復興特別所得税」(税率2.1%)が上乗せされています。これは東日本大震災の復興財源として、令和19年まで課税される予定でした。
今回の改正では、令和9年分以後の復興特別所得税の税率を2.1%から1.1%に引き下げ、同時に課税期間を10年延長して令和29年までとします。
| 改正前 | 改正後(令和9年分〜) | |
|---|---|---|
| 復興特別所得税 | 基準所得税額×2.1%(〜令和19年) | 基準所得税額×1.1%(〜令和29年) |
| 防衛特別所得税 | なし | 基準所得税額×1.0%(令和9年〜当分の間) |
| 合計 | 基準所得税額×2.1% | 基準所得税額×2.1% |
令和9年〜令和19年は、復興特別所得税1.1%+防衛特別所得税1.0%=合計2.1%のままで、短期的には実質的な税負担の増加はありません。
令和20年以降が実質的な負担増
令和20年〜令和29年についても、復興特別所得税1.1%と防衛特別所得税1.0%が課税され、合計税率は2.1%となります。本来、復興特別所得税は令和19年で終了する予定でしたが、令和29年まで10年間延長されるため、令和20年以後の2.1%分が実質的な負担増といえます。
時期ごとの整理
| 時期 | 復興特別 | 防衛特別 | 合計 | 負担の変化 |
|---|---|---|---|---|
| 〜令和8年 | 2.1% | — | 2.1% | 現状 |
| 令和9年〜令和19年 | 1.1% | 1.0% | 2.1% | 変わらない |
| 令和20年〜令和29年 | 1.1% | 1.0% | 2.1% | 実質増(本来はゼロのはず) |
| 令和30年〜 | — | 1.0% | 1.0% | 防衛特別のみ継続 |
※防衛特別所得税は「当分の間」とされており、令和30年以降の扱いは現時点で確定していません。
具体的にいくら増える?
負担額は所得税額に比例します。所得税額別の年間負担額(防衛特別所得税1.0%分)は次のとおりです。
| 所得税額(年間) | 防衛特別所得税(1.0%) |
|---|---|
| 10万円 | 1,000円 |
| 50万円 | 5,000円 |
| 100万円 | 1万円 |
| 300万円 | 3万円 |
| 500万円 | 5万円 |
ただし、令和9年〜令和19年は復興特別所得税が1.1%に下がるため、合計の手取りは変わりません。上の表は「防衛特別所得税だけを取り出すと」いくらか、という数字です。
実務への影響
給与計算・源泉徴収
源泉徴収の際に用いる税率は、現在「所得税+復興特別所得税」で計算されています(たとえば報酬の源泉徴収は10.21%)。令和9年以後は、この内訳が「所得税+復興特別+防衛特別」に変わります。
合計の税率が変わらなければ、実際の天引き額は同じです。ただし、給与計算ソフトや会計ソフトは令和9年分に向けた更新が必要になります。
確定申告
確定申告書には、復興特別所得税に加えて防衛特別所得税の欄が設けられる見込みです。計算方法自体は復興特別所得税と同じなので、実務上の手間が大きく増えることはないと考えられます。
法人向けの防衛特別法人税との違い
| 防衛特別所得税(個人) | 防衛特別法人税(法人) | |
|---|---|---|
| 課税対象 | 個人の所得税(基準所得税額) | 法人税 |
| 税率 | 基準所得税額×1% | 法人税額×4%(中小法人は軽減あり) |
| 開始時期 | 令和9年分〜当分の間 | 令和8年4月1日以後開始事業年度〜 |
法人のほうが1年早く始まり、税率も高いのが特徴です。法人を経営されている方は、両方の影響を受けることになります。法人側の詳細は「防衛特別法人税とは?2026年4月から始まる増税の仕組み」をご覧ください。
まとめ
- 令和9年(2027年)分以後、基準所得税額に1%の防衛特別所得税が課される
- 同時に復興特別所得税が2.1%→1.1%に引き下げられるため、令和9年〜令和19年の合計税率は2.1%で変わらない
- 復興特別所得税の課税期間が令和19年から令和29年まで10年延長される
- 令和20年〜令和29年も、復興特別所得税1.1%+防衛特別所得税1.0%で合計2.1%が課税される
- 本来令和19年で終わるはずだった復興特別所得税が延長されるため、令和20年以後の2.1%分が実質的な負担増
- 防衛特別所得税は「当分の間」とされ、終了時期は明示されていない
- 所得税額に対する課税なので、所得税がゼロなら防衛特別所得税もゼロ
今すぐ手取りが大幅に減るわけではありませんが、復興特別所得税の延長により長期的な負担が増える点は知っておく必要があります。



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