国税庁の基幹システムが、2026年(令和8年)9月24日に新システム「KSK2」へ切り替わります。KSK2そのものは税務署の職員が使うシステムですが、切り替えに合わせて私たち納税者の側にも、いくつか実務上の変更があります。
とくに「e-Taxが数日間まったく使えなくなる」「電子で通知を受け取っている人は、改めて同意の手続きが必要になる」といった点は、知らないまま9月を迎えると困る可能性があります。
この記事では、KSK2への移行にあわせて納税者側で確認しておきたい7つのポイントと、9月までにやっておくことを整理します。
KSK2への切り替えは2026年9月24日
KSK(国税総合管理システム)は、申告書の情報や納付の状況などを一元管理する、国税庁の基幹システムです。2001年(平成13年)に全国導入されて以来、長く税務行政を支えてきました。
これを刷新するのが「KSK2」で、2026年(令和8年)9月24日(木)のリリースが予定されています。紙を前提とした事務からデータを前提とした事務へ切り替えることが、大きな狙いです。
KSK2そのものの仕組みや、税務調査への影響については「KSK2とは?国税庁の次世代システムで税務調査はどう変わるのか」で詳しく解説しています。ここでは「利用者側の手続きがどう変わるか」に絞って見ていきます。
① e-Taxが約5日間使えなくなる
まず、いちばん影響が大きいのがこれです。システムの切り替え作業のため、e-Taxが長時間メンテナンスで停止します。
- 令和8年9月19日(土)0:00 ~ 9月24日(木)8:30
- 令和8年9月26日(土)0:00 ~ 24:00
1回目は、土曜の0時から木曜の朝までのまる5日間以上です。この間はe-Taxにログインできないため、電子申告や電子納税ができないのはもちろん、メッセージボックス(受信通知など)の確認もできません。
9月中旬から下旬にかけて、次のような予定がある方は注意してください。
- 8月決算・9月決算などで、申告期限がこの時期に重なる法人
- 源泉所得税の納付(納期の特例を使っていない場合、毎月10日)
- 消費税の中間申告・中間納付
- 各種の申請・届出をe-Taxで提出する予定がある方
対策はシンプルで、「9月18日までに済ませておく」ことです。ぎりぎりに回すと、システムが止まっていて手続きできない、という事態になりかねません。9月のスケジュールは早めに前倒しで組んでおきましょう。
② 申告書・申請書の様式が変わる
KSK2では、紙で提出された書類をAI-OCR(人工知能を使った文字読み取り)でデータ化する仕組みが本格的に動き出します。読み取りやすい形にするため、一部の申告書・申請書・届出書・法定調書の様式が変更されます。
主な変更点は次のとおりです。
- 申告書の「控用」がなくなる
- 配色が原則として白黒になる
気をつけたいのは、手元に印刷して保管してある古い様式を使い回さないことです。紙で提出する場合は、その都度、国税庁ホームページから最新の様式をダウンロードして使ってください。
なお、この様式変更は紙で提出する場合の話です。e-Taxで電子申告している場合は影響がありません。この機会に電子申告へ切り替えるのも一つの手です。
③ 納付書の「整理番号」が「お問い合わせ番号」に変わる
税務署から届く通知には、これまで「記号・番号」が記載されていましたが、KSK2移行後は13桁の「お問い合わせ番号」が印字されるようになります。
納付書や所得税徴収高計算書も同様で、右上にあった「整理番号」欄(8桁)が「お問い合わせ番号」欄(13桁)に変わります。
税務署に問い合わせをするときは、この「お問い合わせ番号」を伝えると、どの文書についての質問かがすぐに特定でき、やり取りがスムーズになります。届いた通知は番号ごと保管しておくとよいでしょう。
④ 申告書の提出日を証明する方法が変わる
もともと、申告書の控えへの収受日付印(受付印)の押なつは、2025年(令和7年)1月から廃止されています。紙で提出する場合は、提出用のみを出す取り扱いです。
KSK2への移行後は、申告書等閲覧サービスや開示請求で書類を確認したときに、イメージ画像のヘッダー部分に提出年月日が印字されるようになります。提出した事実と日付を、後から確認しやすくする仕組みです。
とはいえ、日常的に困るのは「銀行や補助金の申請で、受付印のある申告書の控えを求められる」場面ではないでしょうか。
国税庁は、金融機関や補助金を扱う行政機関に対して「収受日付印のある控えを求めないように」と周知しています。ただ、現場ではまだ求められることもあります。その場合は、e-Taxで申告していれば「受信通知(メール詳細)」を印刷したものが提出日の証明として使えます。この点でも、電子申告のほうが手間が少なくて済みます。
⑤ 電子で通知を受け取るには「一括同意」の手続きが必要
これが一番の要注意ポイントです。
税務署からの処分通知等をe-Tax上で電子的に受け取る仕組みがありますが、KSK2への移行で、電子交付できる通知の種類が9種類から約1,000種類に大幅に拡大します。
それに伴い、同意のしかたが変わります。
- これまで:申請等のたびに同意する「個別同意」
- これから:あらかじめまとめて同意しておく「一括同意」
ここで見落としやすいのが、すでに個別同意で電子交付を受けている人も、改めて一括同意の手続きが必要になるという点です。
電子交付を希望する方は、2026年9月24日(木)以後に、e-Tax上で一括同意の手続きを行ってください。移行前には手続きできないため、9月24日以降に忘れずに対応する、とカレンダーに入れておくことをおすすめします。
⑥ 名前の旧字体が置き換わることがある
KSK2で使える漢字は、日本産業規格(JIS X 0213)で定義された文字に統一されます。
そのため、税務署から届く文書や納税証明書で、旧字体が新字体に置き換わる場合があります。たとえば「髙」が「高」に、「𠮷」が「吉」に、といった具合です。
名前や屋号に旧字体を使っている方は、届いた書類の文字が変わっていても、システム上の仕様であって間違いではありません。なお、申告書等を提出する側は、これまでどおり旧字体を使って差し支えありません。
⑦ e-TaxのIPアドレスが動的に変わる
これは主に、会計ソフトや自社システムからe-Taxに接続している場合の話です。
KSK2への移行に伴い、e-TaxのIPアドレスが固定から動的(接続のたびに変わる)に変更されます。IPアドレスを指定して接続する設定にしている場合は、URLを使った接続に変更する必要があります。
心当たりがない方はとくに気にする必要はありませんが、社内で独自にシステムを組んでいる場合は、システム担当者や会計ソフトのメーカーに確認しておくと安心です。会計ソフト各社もKSK2対応版の提供を進めています。
2026年9月までにやることチェックリスト
ここまでの内容を、やることベースで整理します。
- □ 9月中旬〜下旬に予定している申告・納付を、9月18日までに前倒しする
- □ 9月19日〜24日、26日はe-Taxが使えないことをスケジュールに入れておく
- □ 紙で提出している場合、印刷して保管している古い様式を使わない(提出のたびに最新版を入手)
- □ 使っている会計ソフトがKSK2に対応しているか確認する
- □ IPアドレス指定でe-Taxに接続している場合は、URL接続に変更する
- □ 9月24日以降に、e-Taxで電子交付の「一括同意」手続きを行う(電子で通知を受け取りたい場合)
まとめ
KSK2は税務署内部のシステムなので、日々の経理業務が根本から変わるわけではありません。ただし、
- 9月19日〜24日にe-Taxが止まる
- 電子交付を受けたい人は、9月24日以降に一括同意が必要
この2点は、知らないでいると手続きが間に合わなかったり、通知が届かなくなったりする可能性があります。9月に入る前に、社内やご自身のスケジュールを一度見直しておきましょう。
KSK2の導入によって税務調査の選定精度が上がるとも言われています。制度そのものの解説は「KSK2とは?国税庁の次世代システムで税務調査はどう変わるのか」にまとめていますので、あわせてご覧ください。



コメント