事業をしていれば、赤字(損失)が出る年もあります。青色申告をしている個人事業主は、その赤字を翌年以降に繰り越して、黒字の年の所得と相殺できます。これを「純損失の繰越控除」といいます。この記事では、繰り越せる期間と仕組みをわかりやすく解説します。
赤字は3年間繰り越せる
青色申告をしている個人事業主は、その年に生じた純損失(赤字)を翌年以後3年間にわたって繰り越し、各年の所得から差し引くことができます。
ここでいう純損失とは、事業所得などの赤字を、給与所得・不動産所得など他の所得と損益通算してもなお控除しきれない金額をいいます。事業が赤字でも、他の所得で相殺しきれる場合は、翌年へ繰り越す純損失は残りません。
【例】今年100万円の赤字 → 翌年300万円の黒字の場合
翌年の所得:300万円 − 100万円 = 200万円に対して課税
赤字の年に苦しんだ分を、黒字の年に取り戻せる仕組みです。立ち上げ期で赤字が続きやすい事業者にとって、大きな支えになります。
なお、特定非常災害により事業用資産に損失が生じた場合など、一定の場合には繰越期間が5年に延長されることがあります。通常の事業赤字は3年繰越が原則です。
3年で使い切れないとどうなる?
繰越期間は3年間なので、4年目以降に持ち越すことはできません。使い切れなかった損失は、そのまま切り捨てになります。
| 年 | 所得 | 繰越損失の使用 | 残る繰越損失 |
|---|---|---|---|
| 1年目 | ▲300万円 | — | 300万円 |
| 2年目 | 100万円 | 100万円を控除 | 200万円 |
| 3年目 | 80万円 | 80万円を控除 | 120万円 |
| 4年目 | 50万円 | 50万円を控除 | 70万円 |
| 5年目 | 200万円 | 使えない(期限切れ) | 0円(切捨て) |
この例では、1年目の赤字300万円のうち70万円が使えないまま消滅します。赤字が大きい年があった場合は、3年以内に黒字化する計画を意識しておくと、税務上のメリットを取りこぼしません。
また、古い年に生じた損失から順に使うのがルールです。複数年の繰越損失がある場合、期限が近いものから消化されます。
繰越控除を受けるための条件
- 青色申告をしていること(白色申告では原則として純損失の繰越控除は使えません。ただし、災害による損失など一部例外があります)
- 損失が生じた年の確定申告を期限内に提出していること
- その後も連続して確定申告を続けていること
赤字の年は「申告しても税金がかからないから」と申告を省略しがちですが、繰越控除を使うには赤字でも必ず確定申告が必要です。
3つ目の「連続して申告」も重要です。途中の年に所得がなくても、申告を続けなければ繰越が途切れます。赤字を繰り越している間は、毎年必ず申告してください。
申告書の書き方
繰越控除を受ける年は、確定申告書とあわせて「所得税の申告書第四表(損失申告用)」を提出します。翌年以降に繰り越す損失額は、この第四表で管理する形になります。
会計ソフトを使っている場合も、繰越損失は自動では引き継がれないことがあります。前年の申告書を確認しながら金額を入力しましょう。
前年に黒字があれば「繰戻し還付」も
前年も青色申告をしていて黒字だった場合は、赤字を前年に繰り戻して、前年に納めた所得税の還付を受けることもできます(純損失の繰戻し還付)。繰り越して将来使うか、前年分を還付してもらうかを選べます。
繰戻し還付を受ける場合は、赤字になった年の確定申告書を期限内に提出するとともに、「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を提出します。
繰越と繰戻し、どちらが有利?
| 繰越控除 | 繰戻し還付 | |
|---|---|---|
| 効果が出る時期 | 翌年以降 | すぐ(還付金が入る) |
| 資金繰り | 改善しない | 改善する |
| 向いているケース | 翌年以降に大きな黒字が見込める | 前年に高い税率で納税していた/今すぐ資金が必要 |
| 注意点 | 3年で切り捨て | 還付請求により税務調査が行われることがある |
判断のポイントは税率です。所得税は累進課税なので、前年の所得が高く高い税率で納税していたなら、繰戻し還付のほうが有利になりやすいです。逆に、翌年以降に大きく伸びる見込みがあるなら、繰越して高い税率の年にぶつけるほうが得になることもあります。
よくある質問
住民税も同じように繰り越せますか?
住民税にも同様の繰越控除の仕組みがあります。所得税の確定申告をすれば、その情報が市区町村へ共有されるため、住民税について別途手続きをする必要は原則ありません。住民税の仕組みは「個人事業主の住民税はいくら?計算方法と支払時期」もご覧ください。
法人の赤字は何年繰り越せますか?
法人の場合は10年間繰り越せます(青色申告が要件)。個人事業主の3年と比べて長いため、赤字が続く見込みなら法人化を検討する材料の一つになります。詳しくは「欠損金の繰越控除とは?法人の赤字を10年繰り越す条件と注意点」をご覧ください。
赤字なら国民健康保険料も下がりますか?
国民健康保険料は所得に応じて計算されるため、赤字の年は保険料が下がります。ただし、自治体によって繰越損失の扱いが異なることがあるため、お住まいの市区町村にご確認ください。
まとめ
- 青色申告なら赤字を3年間繰り越せる(4年目以降は切り捨て)
- 繰越には赤字の年も含めて期限内申告が必要。途中の年も連続して申告する
- 前年が黒字なら「繰戻し還付」も選択できる(還付請求書の提出が必要)
- どちらを選ぶかは税率と資金繰りで判断する
赤字が出た年こそ、青色申告と確定申告が将来の節税につながります。忘れずに申告しておきましょう。



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