会社が社長からお金を借りたときの利息と税務

法人向け

中小企業では、社長個人が会社にお金を貸す「役員借入金」がよく発生します。このとき、利息はどうするのか、税務上どう扱うのかを正しく理解しておくことが大切です。この記事でわかりやすく解説します。

役員借入金とは

役員借入金とは、社長などの役員が、会社に対して貸し付けたお金のことです。会社の資金が不足したときに社長が立て替える、というケースでよく生じます。会社から見れば「借入金(負債)」になります。

よくある発生パターン

  • 資金繰りが厳しいとき、社長が個人資金を入れた
  • 会社の経費を社長の個人カードで立て替えた
  • 役員報酬を実際には支払わず、未払いのまま積み上がった
  • 設立時の費用を社長が負担した

意図せず膨らんでいることも多く、決算のときに初めて金額の大きさに気づくケースもあります。

仕訳の例

社長が会社に100万円を貸したとき
(借方)現金預金 1,000,000 / (貸方)役員借入金 1,000,000

会社が社長に30万円返済したとき
(借方)役員借入金 300,000 / (貸方)現金預金 300,000

社長の個人カードで経費を立て替えた場合の処理は「社長の個人カードで会社経費を払ったときの処理」もあわせてご覧ください。

利息はつけなくてもよい

会社が社長個人から無利息で借りても、通常は会社・社長の双方に直ちに課税問題が生じるものではありません。そのため、中小企業では無利息の役員借入金も多く見られます。

そのため、実務では無利息で処理するケースが一般的です。

利息を払う場合

会社が社長に利息を払う場合は、次の点に注意が必要です。

  • 会社側:支払利息は損金(経費)になります
  • 利率の決め方:税法上の一律の基準はありませんが、会社の銀行借入金利・市場金利・返済期間・担保の有無などを参考に、第三者間でも合理的といえる水準に設定します。著しく高い利息は、過大部分が役員給与や寄附金などとして損金算入を否認される可能性があります
  • 社長側:社長が受け取る利息は、原則として雑所得になります。給与所得者で、給与以外の所得が年間20万円を超える場合などは確定申告が必要です(所得税の確定申告が不要でも、住民税の申告が必要になる場合があります)
  • 源泉徴収:通常の金銭貸付による利息は、預金利息とは異なり、原則として会社での源泉徴収は不要です

なお、会社が役員借入金の元本を返済しても、会社の経費にはならず、社長側の所得にもなりません。経費・所得となるのは、原則として利息部分です。

※逆に「会社が社長に貸す(役員貸付金)」場合は、無利息だと社長に対する給与とみなされるなど扱いが異なります。貸し借りの方向で税務が変わる点に注意しましょう。

役員借入金と役員貸付金の違い

役員借入金(社長→会社)役員貸付金(会社→社長)
会社から見ると負債資産
無利息の場合原則として問題なし社長への給与とみなされる
金額が膨らむと社長の相続財産になる金融機関の評価が下がる
税務調査での視点資金の出どころ私的流用の有無

役員貸付金の詳細は「役員貸付金・役員借入金とは?放置すると危ない3つの理由と解消方法」をご覧ください。

役員借入金の注意点

  • 役員借入金が膨らむと、社長個人の相続財産(会社への貸付金債権)になり、相続税の対象になる
  • 金額が大きい場合は、計画的な返済のほか、DES(債務の資本への振替)なども選択肢になります。ただし、DESは債務消滅益・資本金の増加・登記費用・法人住民税などに影響する場合があるため、税理士・司法書士への事前確認が必要です
  • 借入の事実がわかるよう、金銭消費貸借契約書を作成しておきます。契約書には借入金額・利率・返済期限・返済方法・利息の支払日を記載します。紙の契約書には、借入金額に応じた収入印紙が必要になる場合があります

相続で問題になる理由

社長に相続が発生すると、会社への貸付金は「債権」として相続財産に含まれます。ここで問題になるのは、会社が赤字で返済能力がなくても、原則として額面で評価される点です。

たとえば役員借入金が3,000万円あれば、相続税の計算上は3,000万円の財産として扱われます。実際には返ってこないお金に相続税がかかるという事態になりかねません。

金額が大きくなってきたら、次のような対応を早めに検討しておきましょう。

  • 計画的に返済する(利益が出た年に少しずつ返す)
  • 役員報酬を下げて、その分を返済に回す(社長の所得税・社会保険料も下がる)
  • DES(債務の資本への振替)を検討する
  • 債権放棄を検討する(ただし会社に債務免除益が発生し、法人税の対象になります)

いずれも税務上の影響が大きいため、実行前に税理士へご相談ください。

よくある質問

契約書がなくても大丈夫ですか?

契約書がないこと自体で直ちに否認されるわけではありませんが、税務調査では「本当に借入なのか」「資金の出どころはどこか」が確認されます。契約書と通帳の入出金記録がそろっていれば、説明がスムーズです。

特に、社長個人の資金の出どころは見られやすいポイントです。個人の預金から会社へ移した記録を残しておきましょう。

金融機関からの評価はどうなりますか?

役員借入金は負債ですが、金融機関は「実質的な自己資本」として扱うことが多いです。社長が返済を求めない性質のお金だからです。役員貸付金(会社が社長に貸している状態)がマイナス評価されるのとは対照的です。

未払いの役員報酬も役員借入金になりますか?

未払役員報酬として計上したまま支払っていない場合、実質的に社長が会社に資金を貸しているのと同じ状態になります。ただし、未払いのままだと定期同額給与の要件を満たさないと判断されるおそれがあるため、注意が必要です。役員報酬の扱いは「役員報酬を変更できるタイミングと注意点」もご覧ください。

まとめ

  • 会社が社長から借りる場合、無利息でもOK(実務上一般的)
  • 利息を払う場合、会社は損金・社長は雑所得
  • 元本の返済は経費にも所得にもならない
  • 役員借入金が膨らむと額面で相続財産になるので計画的に
  • 金銭消費貸借契約書と資金の出どころの記録を残す

参考

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