賃上げ税制とは、従業員の給与を一定以上引き上げた企業に対して、増加額の一部を法人税(または所得税)から直接差し引ける制度です。節税効果が大きく、中小企業では最大35%の税額控除が受けられます。この記事では、令和8年度改正後(令和8年4月1日以後に開始する事業年度)の制度をわかりやすく解説します。
賃上げ税制の基本的な仕組み
賃上げ税制は、前年度と比べて給与等支給額(雇用者全体への給与総額)を一定割合以上増加させた場合に、その増加額の一定割合を法人税額から控除できる制度です。
税額控除とは、計算した法人税額から直接差し引くものです。損金算入(課税所得を減らす)よりも節税効果が高く、たとえば「増加額の30%控除」であれば、給与を100万円増やすと法人税が最大30万円減ります。
中小企業向け賃上げ税制の対象者
この制度の対象となるのは、資本金1億円以下の法人などの「中小企業者等」と、青色申告をしている個人事業主です。判定には、雇用者全体(パート・アルバイトを含む)への給与等支給額を使います(役員やその親族などへの給与は除きます)。
中小企業の控除率
中小企業向け賃上げ促進税制では、雇用者全体への給与等支給額が前年度より一定以上増加した場合、その増加額の一部を法人税または所得税から控除できます。令和8年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する事業年度では、控除率は次のとおりです。
- 給与等支給額が前年度比1.5%以上増加:増加額の15%を税額控除
- 給与等支給額が前年度比2.5%以上増加:増加額の30%を税額控除
控除率の上乗せ要件
くるみん認定・えるぼし認定など、子育てとの両立・女性活躍支援の要件を満たす場合は、さらに5%が上乗せされます。そのため、中小企業では最大35%の税額控除を受けられます。
節税効果の計算例(中小企業)
給与総額が前年の3,000万円から3,090万円に増加した場合(増加率3%):
- 給与増加額:90万円
- 基本控除(30%):90万円 × 30% = 27万円の税額控除
- 子育てとの両立・女性活躍支援の上乗せ要件を満たす場合(+5%):90万円 × 35% = 31.5万円の税額控除
ただし、実際に控除できる金額は法人税額または所得税額の20%が上限です。給与を増やしながら、その一部が法人税の節税につながる仕組みです。
控除しきれない場合は5年間繰り越せる
中小企業については、賃上げを実施した年度に控除しきれなかった金額を、最大5年間繰り越すことができます。赤字や利益が少ない年でも、翌年以降に持ち越して活用できます。
適用要件のポイント
- 比較する給与総額:前事業年度の雇用者全体への給与等支給額と当事業年度を比較します。役員報酬は含みません。
- 雇用者全体で判定する:中小企業向け制度では、雇用者全体の給与等支給額で判定するため、新入社員の採用による増加も含まれます。
- 法人税額の20%が控除上限:その事業年度の法人税額または所得税額の20%が控除の上限となります。繰越税額控除を使う場合も、当年分と繰越分を合わせて20%が上限です。
- 給与等支給額の増加が条件:実際に前年より給与総額が増えていることが前提です。減少した場合は適用できません。
- 対象法人の範囲:中小企業者等であっても、前3事業年度の所得金額の平均額が15億円を超える法人は対象外です。また、大規模法人に一定割合以上支配されている法人も対象外となる場合があります。
適用時の注意点
- 確定申告書への記載が必要:適用を受けるには確定申告書に控除額等を記載し、別表(計算明細書)を添付する必要があります。
- 毎年度改正される可能性がある:賃上げ税制は年度ごとに要件・控除率が変更されることがあります。適用前に最新の情報を確認してください。
- 個人事業主も対象:青色申告をしている個人事業主も、一定の要件を満たせば所得税から控除できます。
- 令和7年以前の事業年度は最大45%だった:令和6年4月1日から令和8年3月31日までに開始する事業年度では、教育訓練費の増加による上乗せ措置があり、中小企業は最大45%の控除率となる場合がありました。令和8年4月1日以後に開始する事業年度では、教育訓練費の上乗せは廃止され、最大控除率は35%となります。
まとめ
賃上げ税制は、給与を増やすほど法人税が直接減る、インパクトの大きい節税策です。令和8年4月1日以後に開始する事業年度では、中小企業は最大35%の控除率があり、賃上げを検討している場合は積極的に活用したい制度です。
要件の判定や申告書への記載は複雑な部分もあるため、顧問税理士と連携して正確に適用することをおすすめします。



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