法人税の申告期限は、原則として事業年度終了の日の翌日から2か月以内です。しかし、株主総会の日程などの都合で2か月以内に決算が確定しない会社もあります。そのような場合に使えるのが申告期限の延長の特例です。この記事では、延長できる条件と手続き、そして見落としやすい「延長後の納付には利子税がかかる」という点をわかりやすく解説します。
法人税の申告期限は原則「決算日から2か月以内」
法人税の確定申告書は、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に提出します。3月決算の会社なら原則5月31日が期限です。納付期限も同じ日になります。なお、期限が土日・祝日に当たる場合は、原則として翌開庁日になります。
| 決算月 | 原則の期限 | 1か月延長した場合 |
|---|---|---|
| 3月 | 5月31日 | 6月30日 |
| 6月 | 8月31日 | 9月30日 |
| 9月 | 11月30日 | 12月31日 |
| 12月 | 2月末日 | 3月31日 |
申告期限の延長の特例とは
定款などの定めにより、事業年度終了の日の翌日から2か月以内に定時株主総会が招集されない常況にある法人は、申請により確定申告書の提出期限を1か月間延長できます。3月決算なら5月31日→6月30日になります。
会計監査人の監査を受けるなどの理由で決算確定にさらに時間がかかる場合は、状況に応じてより長い期間の延長が認められることもあります。
ポイントは、「単に忙しいから」では認められないことです。定款に「定時株主総会は事業年度終了後3か月以内に招集する」といった定めがあり、実際にその運用になっていることが前提になります。
手続き|「申告期限の延長の特例の申請書」を提出する
- 書類名:定款の定め等による申告期限の延長の特例の申請書
- 提出先:納税地の所轄税務署長
- 提出時期:最初に適用を受けようとする事業年度終了の日まで
申請書を提出した場合で、適用を受けようとする事業年度終了の日の翌日から15日以内に承認または却下の処分がなかったときは、1か月間の延長が自動的に認められたものとして取り扱われます。
一度承認されれば毎年申請し直す必要はなく、継続して適用されます。やめる場合は「取りやめの届出書」を提出します。
注意したいのが提出時期です。3月決算の会社が当期から適用したい場合、3月31日までに提出する必要があります。決算作業が始まってから「間に合わないから延長しよう」と思っても、その期には使えません。
最重要|納付は延長後でも可能だが利子税がかかる
申告期限の延長が認められると、法人税の納付期限も延長後の申告期限まで延びます。ただし、当初の申告期限の翌日から実際に納付した日までの期間について、原則として利子税がかかります。
そのため実務では、決算日から2か月以内の当初期限までに税額を概算して「見込納付」を行い、確定申告時に差額を精算する方法が一般的です。見込納付額が不足している場合は、その不足額について利子税が生じる可能性があります。
利子税と延滞税の違い
| 利子税 | 延滞税 | |
|---|---|---|
| 発生する場面 | 正規の手続きによる期限の延長 | 期限までに納付しなかった場合 |
| 性格 | 利息に相当するもの | ペナルティ |
| 割合 | 低い(近年は年1%前後) | 高い |
| 損金算入 | できる | できない |
利子税は損金に算入できる点が延滞税との大きな違いです。とはいえ支出であることに変わりはないため、可能な限り見込納付で抑えるのが実務の基本です。
見込納付の流れ(3月決算の例)
| 時期 | やること |
|---|---|
| 5月末まで | 概算の税額を計算し、見込納付する |
| 6月 | 株主総会で決算を承認 |
| 6月30日まで | 確定申告書を提出し、差額を精算 |
見込納付はやや多めに納めておくのが安全です。納めすぎた分は還付されますが、不足した分には利子税がかかるためです。
消費税・地方税はどうなる?
消費税は法人税とは別の制度で、法人税の申告期限延長の特例を受けている法人が「消費税申告期限延長届出書」を提出すると、消費税・地方消費税の申告期限と納付期限が1か月延長されます。法人税の延長申請とは別に届出が必要な点に注意しましょう。
ただし、当初の期限後に納付する場合は延長期間に応じた利子税がかかるため、法人税と同様に見込納付を行うことがあります。
法人住民税・法人事業税についても申告期限の延長制度がありますが、法人税の手続だけで完了するとは限りません。都道府県・市区町村へ申告期限延長の申請書や届出書の提出が必要になるため、各自治体の手続きを確認しましょう。
| 税目 | 延長のための手続き |
|---|---|
| 法人税 | 申告期限の延長の特例の申請書(税務署) |
| 消費税 | 消費税申告期限延長届出書(税務署) |
| 法人事業税・特別法人事業税 | 都道府県への申請・届出 |
| 法人住民税 | 都道府県・市区町村への申請・届出 |
延長するメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
|---|---|
| 決算・申告を落ち着いて確認できる | 利子税がかかる(見込納付で軽減可) |
| 株主総会の日程に無理がなくなる | 見込納付の手間が増える |
| 期限後申告のリスクを避けられる | 地方税も含め手続きが増える |
会計監査を受ける会社や、決算作業が集中する時期に余裕を持ちたい会社にとっては有効な制度です。一方、小規模で2か月以内に問題なく申告できている会社であれば、あえて延長する必要はありません。
よくある質問
一人会社でも延長できますか?
定款で定時株主総会の招集時期を「事業年度終了後3か月以内」などと定めていれば、形式上は要件を満たします。ただし、実際に総会を開いた記録(議事録)を残しておくことが前提です。
延長しても青色申告は取り消されませんか?
延長後の期限内に提出していれば「期限内申告」です。青色申告の取消事由にはなりません。逆に、延長の承認を受けずに2か月を過ぎると期限後申告となり、2期連続すると青色申告が取り消されるおそれがあります。
利子税はいくらくらいですか?
割合は各年の市中金利をもとに毎年見直されており、近年は年1%前後で推移しています。仮に税額300万円を1か月遅れて納付した場合、数千円程度のイメージです。金額としては大きくありませんが、見込納付をすれば避けられます。
まとめ
- 定款の定めで2か月以内に定時総会が招集されない常況なら、申告期限を1か月延長できる
- 申請書は適用したい事業年度終了の日までに提出。一度出せば継続適用
- 申告・納付は延長後の期限まで行えるが、当初期限後の納付には利子税がかかるため、見込納付を検討する
- 利子税は延滞税と違い損金算入できる
- 消費税の延長には別途届出が必要。地方税も自治体ごとの手続きが必要
決算月そのものの決め方については「決算月は何月にすべき?法人設立時の決め方と変更方法」もあわせてご覧ください。



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