法人化すると社会保険料はいくらかかる?会社負担・本人負担と増加額の考え方

法人向け

個人事業主から法人化(法人成り)すると、社会保険への加入が原則必須になります。これが法人化の大きなコストの一つです。この記事では、法人化で社会保険料がいくらかかるのか、そして「会社負担・本人負担」と「実質的な増加額」の考え方をわかりやすく解説します。

法人は社会保険の加入が原則必須

法人は、社長1人だけの会社でも、役員報酬を支払っていれば社会保険(健康保険・厚生年金)への加入が原則必要です。個人事業主時代の国民健康保険・国民年金から切り替わります。

「入らない」という選択はできません。加入義務があるのに手続きをしていない場合、最大2年間さかのぼって保険料を請求されることがあります。法人設立後は早めに年金事務所で手続きをしましょう。

会社と個人で「折半」する

社会保険料は、会社と本人(役員・従業員)で半分ずつ負担します(労使折半)。一人会社では、会社負担分も含めて会社全体から資金が流出するため、法人と個人を一体として考えると、会社負担分と本人負担分の合計額を確認する必要があります。ただし、会社負担分は法人の損金、本人負担分は社会保険料控除の対象になり、その分の税負担は軽くなります。

保険料の目安

社会保険料は、役員報酬の金額(標準報酬月額)に応じて決まります。健康保険・厚生年金あわせて、おおむね報酬の約30%(会社負担+本人負担の合計)が目安です。

※健康保険料率は加入先や都道府県によって異なります。また、40歳以上65歳未満の方には介護保険料が加算されます。会社にはこのほか、子ども・子育て拠出金の負担もあります。

【例】役員報酬が月50万円の場合、健康保険・厚生年金の会社負担と本人負担の合計は、月額おおむね14万〜15万円程度が目安です。

役員報酬別の年間負担イメージ

月額報酬年間の社会保険料(会社+本人の目安)
20万円約70万円
30万円約105万円
50万円約175万円
80万円約270万円
100万円約300万円

※40歳以上・協会けんぽ加入を前提とした概算です。実際の金額は都道府県や年度により異なります。

表を見ると、月80万円と月100万円で負担の伸びが鈍っているのがわかります。これは社会保険料に上限があるためです。

  • 厚生年金:標準報酬月額65万円が上限(報酬月額63.5万円程度で頭打ち)
  • 健康保険:標準報酬月額139万円が上限

報酬が高額になるほど、報酬に対する社会保険料の割合は下がっていきます

「増加額」で考える

ただし、この金額がそのまま「法人化による増加額」になるわけではありません。法人化前に負担していた国民健康保険料・国民年金保険料を差し引いて比較する必要があります。

法人化による実質的な増加額 = 法人化後の社会保険料(会社負担+本人負担) − 法人化前の国民健康保険料・国民年金保険料

国民健康保険料は自治体・所得・世帯人数によって異なるため、一律の増加額は示せません。ご自身の状況で試算することが大切です。

※実際の料率は健康保険組合や都道府県、年度によって変わります。最新の料率で試算してください。

なお、国民健康保険料にも上限(賦課限度額)があります。所得が高い個人事業主の場合、すでに上限に達していることも多く、その場合は法人化による健康保険料の増加が思ったほど大きくないこともあります。

負担は増えるが、メリットもある

  • 将来の年金が手厚くなる(厚生年金は国民年金より受給額が多い)
  • 会社負担分の社会保険料は損金になる
  • 健康保険の保障(傷病手当金など)が手厚い
  • 健康保険には「扶養」の仕組みがある:被扶養者に該当する家族は、原則として追加の健康保険料を負担せずに加入できます(国民健康保険には扶養の仕組みがなく、世帯人数に応じて保険料がかかります)

特に扶養の仕組みは見落とされがちです。配偶者や子どもがいる場合、国民健康保険では人数分の保険料がかかりますが、健康保険なら被扶養者の分は追加負担がありません。家族が多いほど、法人化による負担増は小さくなる傾向があります。

また、配偶者が被扶養者になれば国民年金の第3号被保険者となり、保険料の負担なく年金の加入期間として扱われます。これも実質的なメリットです。

法人化の判断では「税金+社会保険」で考える

法人化すると税金が減っても、社会保険料の増加で手取りが変わらない、というケースもあります。法人化のシミュレーションでは、税金だけでなく社会保険料も含めて検討することが大切です。

チェックすべき項目は次のとおりです。

  • 法人税・法人住民税(赤字でも均等割が最低7万円
  • 役員報酬にかかる所得税・住民税
  • 社会保険料(会社負担+本人負担)
  • 消費税(設立から一定期間の免税の可否)
  • 設立費用・毎年の税理士報酬などの維持コスト

法人化のタイミング全般は「個人事業主が法人化すべきタイミングとは?」、均等割については「赤字法人でも原則かかる法人住民税の均等割」もご覧ください。

よくある質問

役員報酬をゼロにすれば社会保険に入らなくていいですか?

役員報酬がまったくない場合は、社会保険の被保険者になりません。ただし、役員報酬をゼロにすると、そもそも法人化のメリット(給与所得控除の活用など)が失われます。また、生活費をどこから出すのかという問題も生じます。実質的な選択肢になるケースは限られます。

役員報酬を低く設定すれば保険料を抑えられますか?

抑えられますが、法人に利益が残って法人税がかかるため、トータルで有利とは限りません。また、将来の年金額も少なくなります。報酬額の設定は、税金・社会保険・手取り・将来の年金を総合的に見て決める必要があります。

保険料は毎年見直されますか?

はい。毎年4〜6月の報酬をもとに、9月から翌年8月までの標準報酬月額が決まります(定時決定)。また、役員報酬を大きく変更した場合は年の途中でも改定されます。詳しくは「社会保険の算定基礎届とは?」をご覧ください。

まとめ

  • 法人は社長1人でも社会保険の加入が原則必須
  • 保険料は報酬の約30%が目安(会社+本人)。ただし上限があり、高額報酬ほど負担率は下がる
  • 判断は「増加額」で。法人化前の国保・国民年金を差し引いて比較する
  • 負担は増えるが年金・保障は手厚くなる。扶養の仕組みは家族が多いほど有利
  • 法人化の判断は税金と社会保険の両方で考える

参考

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