消費税率が1%に下がるときの実務対応|経過措置・請求書・レジのチェックリスト【法案審議中】

インボイス

令和9年(2027年)4月1日から令和11年3月31日までの2年間、飲食料品の消費税率を8%から1%に引き下げる法案が、令和8年10月9日に閣議決定され、国会に提出されました。

税率が変わると、レジや会計ソフトの設定だけでなく、請求書の書き方、4月1日をまたぐ取引の税率、返品や値引きの処理など、経理の現場で判断に迷う場面が多く出てきます。この記事では、国税庁が公表したQ&Aをもとに、税率変更の前後で確認したい実務のポイントをチェックリスト形式で整理します。

※ 本記事は令和8年10月20日時点の情報です。法案は国会で審議中で、まだ成立していません。

まず押さえる:税率変更の基本ルール

項目取扱い
適用される税率飲食料品(酒類・外食を除く)は1%。範囲は現在の軽減税率(8%)の対象と同じ
税率の判定時期飲食料品を販売(引渡し)した日で判定。3月31日までに結んだ契約でも、4月1日以後に引き渡せば原則1%
仕入れの税率3月31日までに仕入れた飲食料品は、販売が4月以後でも仕入れは8%
税率の内訳1%=消費税0.78%+地方消費税0.22%
税込価格から消費税額を求めるとき1%対象は、原則として税込価格×1/101(8%は×8/108、10%は×10/110)
新聞週2回以上発行・定期購読の新聞は8%のまま。令和9年4月からは1%・8%・10%の3税率

4月1日をまたぐ取引の税率

ケース税率
深夜営業の売上げ:午前1時締めで、4月1日0時〜1時の売上げを3月31日分として計上継続して同じ基準で計上していれば、8%でもよい
売り手と買い手で計上基準が違う:売り手が3月30日出荷(8%で請求)、買い手は4月2日に検収買い手は売り手が適用した税率(8%)で仕入税額控除
返品:3月31日以前に8%で売った飲食料品が、4月以後に返品された8%で売上げの返還等を計算
貸倒れ:3月31日以前の売掛金(8%)が、4月以後に貸倒れになった8%で計算
現金主義の小規模事業者:3月31日以前の販売が、現金主義で4月以後の売上げになる8%

請求書などに税込金額だけが書かれていて、8%と1%のどちらで計算したのかわからない場合は、取引先に確認してから税率を判断します。

経過措置:4月以後も8%になる取引

過去の税率引上げ(5%→8%、8%→10%)では、工事の請負や資産の貸付けなどについて、旧税率を適用する経過措置が設けられていました。今回の引下げでは、経過措置は次の2つに限られています。

取引8%になる要件例
定期供給契約令和9年1月1日前に、不特定かつ多数の人に一定の周期で継続して供給する契約を結び、4月1日前に代金を受け取っている(受け取った部分に限る)代金を先払いして、季節の食材が毎月届く定期便
通信販売令和9年1月1日前に販売条件を提示し、4月1日前に申込みを受けているお中元・ギフトのカタログ販売

この経過措置は選択制ではありません。要件にあてはまれば8%になります。ただし、契約やカタログで「令和9年4月1日以後の販売は税率1%による」「税率が1%に変わった場合は〇〇円とする」と定めている場合や、1月1日以後に契約金額を変更した場合は、1%になります。

なお、定期供給契約の経過措置は、不特定かつ多数の人に対し、週・月・年などの一定の周期で飲食料品を継続して供給する契約が対象です。個別の取引先と結んだ通常の継続取引がすべて対象になるわけではありません。

定期便やカタログ通販を扱う事業者は、令和8年中に作る契約書・カタログの文言を確認しておきましょう。1%を前提とした価格を書いておけば、4月以後は1%で販売できます。

請求書(インボイス)と帳簿の書き方

記載事項は変わらない

飲食料品のインボイスには、適用税率1%と、1%で計算した消費税額等を書きます。それ以外の記載事項は変わりません。「軽減税率の対象品目である旨」(※印など)を書いていれば、「税率1%の対象品目である旨」を新たに書く必要はありません。

締め日が4月1日をまたぐ請求書

毎月15日締めなどで、1枚の請求書に3月までの取引(8%)と4月以後の取引(1%)が混在する場合は、次のどちらかの方法で作成します。

  • 請求書を分ける:3月16日〜31日分と、4月1日〜15日分を別々に発行する
  • 1枚の請求書の中で区分する:3月分と4月分の小計を分け、合計欄で1%・8%・10%ごとの対価の額と消費税額を記載する

請求書発行システムが、1枚の請求書に3つの税率を混在させて計算できるか、事前に確認しておきましょう。

総額表示の特例(値札の貼り替えが間に合わない場合)

税率変更の前後各2か月について、総額表示(税込価格の表示)の特例が設けられます。変更前は新しい税率による税込価格の先行表示、変更後は古い税率による税込価格の継続表示が認められます。

期間実際の税率特例で認められる表示
令和9年2月1日〜3月31日8%変更後の1%による税込価格
令和9年4月1日〜5月31日1%変更前の8%による税込価格
令和11年2月1日〜3月31日1%変更後の8%による税込価格
令和11年4月1日〜5月31日8%変更前の1%による税込価格

いずれも、夜間の値札の貼り替えに対応できない、商品パッケージに価格が印字されているなど、表示の変更が間に合わない具体的な事情があり、店頭の掲示などで消費者の誤認を防ぐ措置を講じていることが条件です。好きな税率の表示を選べる制度ではありません。また、税抜価格だけの表示は引き続き認められません。

時期別チェックリスト

令和8年中(いまから年末まで)

  • 自社の売上げ・仕入れに占める飲食料品の割合を把握し、納税額が増えるか減るかを試算する
  • 飲食料品の譲渡を行う免税事業者・簡易課税の事業者は、課税事業者になるか、一般課税に戻るかを検討する。特例により、届出は令和9年4月1日を含む課税期間中の提出でよい。ただし、課税事業者選択届出書の特例では、個人事業主・12月決算法人は令和9年1月1日から課税事業者となり、1月〜3月の取引(8%)も申告対象になる。4月1日から課税事業者になりたい場合は、インボイス登録の経過措置を使う方法もある。課税事業者やインボイス発行事業者になると、原則として一定期間は免税事業者に戻れない
  • 一般課税の飲食店などで簡易課税を選ぶなら、選択届出書には特例がないので、個人事業主・12月決算法人は令和8年12月31日が期限。簡易課税を選べるのは、原則として基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者
  • 定期便・カタログ通販の契約書や販売条件に、1%への変更後の価格を書いておくか検討する
  • レジ・POS・請求書発行システム・会計ソフト・ECサイトの改修予定を、メーカーやベンダーに確認する

令和9年1月〜3月

  • 会計ソフトに1%の税区分を追加し、4月1日以後の取引から使えるように準備する
  • 値札・メニュー・チラシ・ネットショップの価格表示を準備する。張り替えが間に合わない事情がある場合は、誤認防止の掲示をすることを条件に、2月1日〜3月31日は1%による先行表示、4月1日〜5月31日は8%による継続表示が認められる(上記の総額表示の特例)
  • 取引先との間で、締め日をまたぐ請求書の書き方を確認する
  • 免税事業者がインボイス登録の経過措置で4月1日から課税事業者になる場合は、3月17日までに登録申請書を提出。3月17日は登録希望日の15日前の日で、土日祝日でも翌日に延長されない

令和9年4月以後

  • 4月1日以後の飲食料品の売上げ・仕入れが1%で処理されているか、最初の月次決算で確認する
  • 3月以前に販売したものの返品・値引き・貸倒れは8%で処理する
  • 中間納付が過大になる場合は、1%で計算し直した前年税額に基づく中間申告の特例や、仮決算による中間申告を検討する

令和11年3月(税率が8%に戻る前)

令和11年4月1日に税率は8%に戻ります。レジや会計ソフトの再設定、価格表示、締め日をまたぐ請求書など、同じ対応がもう一度必要です。総額表示の特例(令和11年2月1日〜3月31日は8%による先行表示、4月1日〜5月31日は1%による継続表示)や中間申告の特例も、終了時に設けられます。

よくある質問

Q. 3月に受けた注文を4月に納品する場合は?

税率は引渡しの日で判定するので、4月1日以後に納品すれば原則1%です。定期供給契約・通信販売の経過措置にあてはまる場合だけ8%になります。

Q. 飲食料品を扱っていない会社も対応が必要ですか?

売上げには影響しませんが、会議用のお茶やお菓子、来客用の飲み物、贈答用の食品などを仕入れる場合は、4月以後は1%の仕入れになります。会計ソフトの税区分は用意しておきましょう。

Q. 3つの税率が混在すると、簡易インボイス(レシート)はどう書けばいいですか?

小売店や飲食店が交付する簡易インボイスでは、税率ごとに区分した消費税額等か適用税率のどちらか一方の記載で足ります。1%・8%・10%のそれぞれについて、区分して合計した対価の額を記載します。

まとめ

  • 税率は引渡しの日で判定。3月以前の契約でも、4月以後の販売は原則1%(法案審議中)
  • 3月以前の販売の返品・貸倒れは8%で処理。買い手は売り手が適用した税率で仕入税額控除
  • 経過措置は定期供給契約と通信販売だけ。契約書・カタログに1%後の価格を書けば1%
  • インボイスの記載事項は変わらない。締め日をまたぐ請求書は分けるか、1枚の中で区分する
  • 総額表示の特例(変更前2か月は新税率の先行表示、変更後2か月は旧税率の継続表示)・中間申告の特例がある。令和11年4月に8%に戻るときも同じ対応が必要

法案が成立すると、準備期間は半年ほどしかありません。システム改修は早めに手配しておきましょう。


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参考

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