住民税の特別徴収と普通徴収の違い|転職・退職・法人成りのときの切り替え

住民税の特別徴収と普通徴収の違い 確定申告

住民税の払い方には、給与から天引きされる「特別徴収」と、自分で納付書や口座振替で払う「普通徴収」の2つがあります。

会社員のうちは会社が手続きしてくれるので意識することは少ないのですが、転職・退職・独立・法人成りのタイミングで切り替えが必要になり、「知らないうちに滞納になっていた」「急に高額な納付書が届いた」ということが起こりがちです。

この記事では、特別徴収と普通徴収の違いと、切り替えのときに気をつけたいポイントを、従業員側・会社側の両方から整理します。

特別徴収と普通徴収の違い

項目特別徴収普通徴収
払い方会社が給与から天引きして市区町村に納める本人が納付書・口座振替などで納める
回数6月から翌年5月まで12回原則年4回(6月・8月・10月と、12月または翌年1月。市区町村により異なる)
主な対象会社員・役員個人事業主、退職した人、給与以外の所得の分など

住民税は前年の所得をもとに計算され、毎年5〜6月ごろに税額が決まります。そのため、収入が減った年や退職した年でも、前年の所得に応じた住民税を払う必要があります。

なお、65歳以上で公的年金を受給し、一定の要件を満たす方は、公的年金に係る住民税が年金から天引きされます(公的年金からの特別徴収)。

会社は原則として特別徴収しなければならない

従業員に給与を支払い、所得税の源泉徴収義務がある事業者は、原則として住民税の特別徴収義務者になります。実際に源泉徴収する所得税がゼロでも、源泉徴収義務者に該当すれば特別徴収の義務は生じ得ます。「従業員が少ないから」「本人が希望したから」という理由だけで、普通徴収にすることは原則としてできません。

会社の手続きの流れは次のとおりです。

  1. 1月31日まで:従業員の1月1日現在の住所地の市区町村に「給与支払報告書」を提出
  2. 5月ごろ:市区町村から「特別徴収税額決定通知書」が届く(従業員用は本人に渡す)
  3. 6月から翌年5月まで:毎月の給与から天引きし、翌月10日までに市区町村に納付

給与を支払う従業員が常時10人未満の事業者は、申請して市区町村の承認を受ければ、年2回(6月〜11月分を12月10日、12月〜5月分を6月10日)にまとめて納める「納期の特例」を使えます。自動的に適用されるわけではありません。また、納めるのが年2回になるだけで、従業員の給与からは毎月天引きします。

また、令和9年1月1日以後は、市区町村へ一定事項を記載した給与支払報告書を提出した場合、税務署へ「給与所得の源泉徴収票」を提出したものとみなされます。ただし、従業員本人へ交付する源泉徴収票は、引き続き作成・交付が必要です。

退職したときの住民税

退職すると給与からの天引きができなくなるため、まだ払っていない残りの住民税をどう払うかを決める必要があります。退職した時期によって扱いが変わります。

退職した時期残りの住民税の払い方
1月1日〜4月30日原則として、5月分までの残りを最後の給与や退職金からまとめて天引き(一括徴収)。ただし、支給額が残りの税額以下の場合や、死亡退職の場合などは普通徴収
5月中5月分を、最後の給与から通常どおり特別徴収
6月1日〜12月31日原則として普通徴収に切り替えて自分で払う。本人から申出があれば一括徴収も可能
転職先が決まっている旧勤務先・新勤務先が異動届を引き継ぐことで、特別徴収を継続できる

会社は、退職などで特別徴収をしなくなったときは、翌月10日までに「給与所得者異動届出書」を市区町村に提出します。この届出が遅れると、従業員の住民税が会社の未納扱いになったり、普通徴収への切り替えが遅れて本人に一度に高額な納付書が届いたりすることがあります。

退職する方は、普通徴収に切り替わると数か月分がまとめて請求されることがあるので、退職金や貯蓄から払えるよう準備しておきましょう。

また、退職時に残りを一括徴収しても、それは現在の年度分です。退職した年にも給与所得があれば、その所得を基に計算された新しい住民税が翌年6月から課税されることがあります。

独立・法人成りしたときの住民税

会社員から個人事業主になった場合

退職後は普通徴収になります。独立した年は収入が不安定なことが多いのに、住民税は会社員時代の前年の所得で計算されるため、思ったより高い納付書が届くことがあります。あらかじめ資金を取り分けておくと安心です。

個人事業主が法人成りした場合

法人成りした時点ですでに普通徴収となっている住民税(個人事業主だった前年の事業所得などに係る分)は、原則として納付書などで引き続き納めます。ただし、法人から役員報酬を受け始めた後、会社が市区町村へ「特別徴収への切替依頼書」を提出することで、まだ納期限が来ていない分を給与天引きへ切り替えられる場合があります。

翌年度は、会社が提出した給与支払報告書に基づき、原則として役員報酬に係る住民税が特別徴収されます。法人成り前の事業所得など、給与以外の所得に係る住民税については、確定申告書で「自分で納付」を選択できる場合があります。

会社を設立して役員報酬を払い始めたら、会社が特別徴収の手続きをする立場になります。年末には給与支払報告書の提出も必要です。法人成りの判断については「個人事業主が法人化すべきタイミングとは?」をご覧ください。

副業がある場合

副業の所得を確定申告するとき、給与・公的年金以外の所得(事業所得・雑所得・不動産所得など)にかかる住民税については、確定申告書で「自分で納付(普通徴収)」を選ぶことができます。選ばなければ、本業の給与から一緒に天引きされます。

一方、副業がアルバイトなどの給与の場合は、原則として本業の会社で合わせて特別徴収されます(取扱いは市区町村によって異なることがあります)。副業の申告については「副業の確定申告はいくらから必要?」をご覧ください。

まとめ

  • 特別徴収は給与から天引き(6月〜翌5月の12回)、普通徴収は自分で納付(原則年4回)
  • 所得税の源泉徴収義務がある会社は、原則として特別徴収の義務がある
  • 会社は1月31日までに給与支払報告書を提出し、天引きした住民税は翌月10日までに納付(常時10人未満は、承認を受ければ年2回の特例あり)
  • 1月〜4月の退職は原則一括徴収、5月の退職は通常どおり特別徴収、6月〜12月の退職は原則普通徴収(申出があれば一括徴収、転職先で継続も可)
  • 退職・異動があれば、会社は翌月10日までに給与所得者異動届出書を提出
  • 独立・法人成りした年は、前年の所得にかかる住民税を原則普通徴収で払う。法人成り後は、切替依頼書で年度途中から特別徴収にできる場合がある

従業員の入退社が多い会社は、異動届の出し忘れがないよう、給与計算の手順に組み込んでおくことをおすすめします。


あわせて読みたい

参考

コメント

タイトルとURLをコピーしました