役員の任期満了と重任登記|12年以上登記がないとみなし解散の対象になるリスク

法人向け

「社長が変わっていないのだから、役員の登記は何もしなくていい」——そう思っている方は少なくありません。しかし、同じ人が役員を続ける場合でも、任期が満了するたびに「重任」の登記が必要です。

これを忘れると過料の対象になり、さらに12年以上なにも登記をしないままだと、会社が「解散したもの」とみなされる整理作業の対象になります。ある日突然、法務局から通知が届いて慌てる社長は、実際に毎年います。

この記事では、役員の任期の数え方、重任登記の期限、放置した場合に起きること、そして税務への影響までを整理します。

役員の任期は「2年」が原則、「10年」まで延ばせる

株式会社の取締役の任期は、会社法で次のように決まっています。

役員原則非公開会社の定款で延ばせる上限
取締役2年10年
監査役4年10年

「非公開会社」とは、すべての株式に譲渡制限がついている株式会社のことで、中小企業の多くがこれに当たります。この要件を満たす会社に限り、定款で任期を10年まで延ばすことができ、10年に延ばしている会社もあります。

自社の任期が2年なのか10年なのかは、定款を見ればわかります。「取締役の任期は、選任後10年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする」といった条文があるはずです。定款に任期の定めがなければ、原則の2年です。

なお、合同会社には役員の任期がありません。この記事の内容は株式会社の話です。

任期満了日の数え方

ここがいちばん間違えやすいところです。任期は「選任日から丸2年(10年)」ではありません。

会社法の条文はこうなっています。

取締役の任期は、選任後二年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結の時までとする。(会社法332条1項)

言い換えると、「選任から2年(10年)以内に決算日を迎える事業年度のうち、いちばん最後のものについての定時株主総会が終わったとき」が任期満了です。

【例】3月決算の会社、令和6年5月31日に取締役を選任、任期10年

  1. 選任から10年後は令和16年5月31日。「10年以内に終了する事業年度」は、その日までに決算日を迎える事業年度
  2. 3月決算なので、該当する最後の事業年度は令和16年3月期(令和16年3月31日に終了)
  3. 令和16年3月期の定時株主総会(通常は令和16年5月〜6月)の終結時が任期満了

もし令和6年1月31日に選任していたら、10年後は令和16年1月31日なので、令和16年3月期は含まれません。令和15年3月期の定時株主総会(令和15年5〜6月頃)で満了です。選任日が決算日の前か後かで、1年ずれることがあります。

この数え方は、税理士や司法書士でも慎重に確認する部分です。自社の役員の任期満了日がいつなのか、一度きちんと計算しておくことをおすすめします。

同じ人が続けても「重任登記」が必要

任期が満了したら、定時株主総会で役員を改めて選任します。同じ人を選び直す場合でも、法務局に「重任」の登記を申請しなければなりません。

期限任期満了(定時株主総会の終結)から2週間以内
登録免許税資本金1億円以下の会社:申請1件につき1万円(1億円超:3万円)。役員1人ごとではなく、複数の役員をまとめて申請しても1件分
必要書類登記申請書、株主総会議事録、株主リスト、就任承諾書(議事録の記載で代えられる場合あり)など

登記は自分で申請することもできますし、司法書士に依頼することもできます。書類の不備で差し戻されると期限に間に合わなくなるため、初めての場合は司法書士に依頼するのが確実です。

登記を忘れるとどうなる?

① 過料(100万円以下)

会社法は、登記をすることを怠った場合、100万円以下の過料を科すと定めています(会社法976条1号)。過料は会社ではなく、登記を怠った責任のある会社の代表者等が対象となり得ます。裁判所から通知され、税務上の経費にもなりません。

金額は個別の事情を踏まえて裁判所が決めます。なお法務省は、後から登記や届出をしても、過去の登記懈怠は解消されないと案内しています。

② 12年以上登記がないと「みなし解散」の対象に

こちらが本当に怖いほうです。最後の登記から12年以上経過した株式会社は「休眠会社」として整理作業の対象になり、法務大臣の官報公告から2か月以内に届出または必要な登記をしないと、解散したものとみなされます(会社法472条)。12年が経過した時点で自動的に解散するわけではなく、公告に対して何もしなかった場合に解散扱いになる、という仕組みです。

任期10年の会社であれば、重任登記を1回忘れただけで、2年後にはこの対象に入ります。

法務省は毎年この「休眠会社の整理作業」を行っています。令和7年度の流れは次のとおりでした。日付は令和7年度の実例で、毎年同じ日とは限りません。

時期(令和7年度の例)内容
10月10日法務大臣が官報に公告。あわせて法務局から対象の会社へ通知書が発送される
12月10日までこの日までに「まだ事業を廃止していない旨の届出」をするか、役員変更などの登記を申請する
12月11日何もしなかった会社は、登記官が職権で解散の登記をする

通知書は登記上の本店所在地に送られます。本店を移転したのに登記していない会社は、通知が届かないまま解散させられるおそれがあります。

もうひとつ注意したいのは、「まだ事業を廃止していない旨の届出」を出しただけでは、重任登記の義務はなくならないことです。届出でその年の解散は免れても、登記をしないままなら翌年度も整理作業の対象になり得ます。届出と一緒に、必要な登記も済ませてください。

みなし解散になってしまったら

解散したものとみなされても、3年以内であれば会社を「継続」できます(会社法473条)。株主総会の特別決議で継続を決め、2週間以内に継続の登記を申請します。このとき、役員の選任と登記もあわせて行います。

3年を過ぎると継続できなくなり、清算手続きに進むしかありません。通知に気づいたら、すぐに司法書士か顧問税理士に連絡してください。

税務上の影響:事業年度が変わる

見落とされがちですが、みなし解散は税務申告にも影響します。

みなし解散すると、法人税上の事業年度は解散の日で区切られます。解散後は清算中の事業年度となり、会社を継続した場合には継続の日でも区切られます。そのため、通常の決算とは別に申告が必要になることがあります。

「継続の日」は登記の日とは限りません。通常は株主総会の継続決議で定めた日、定めがなければ決議の日です。どの日で区切られ、いつまでに何を申告するかは会社ごとに異なるため、みなし解散の通知が届いたら、登記の相談と同時に顧問税理士にも連絡してください。登記の問題だと思って放置していると、税務申告の期限を落とすことにもつながります。

任期10年の会社ほど忘れやすい

任期を10年にすると登記の手間と費用が減る一方、10年に1回しかやらない手続きは、担当者も社長も忘れます。設立時に司法書士に頼んだきりで、10年後に誰も覚えていないというのは、よくある話です。

対策は単純で、任期満了の年をどこかに記録しておくことです。顧問税理士に「うちの役員の任期はいつまでか」を一度確認し、決算のスケジュールと一緒に管理してもらうのが確実です。

確認しておきたいチェックリスト

  • □ 定款で役員の任期を確認した(2年か10年か)
  • □ 登記事項証明書(登記簿謄本)で、役員の最後の登記日を確認した
  • □ 決算月と選任日から、任期満了の定時株主総会がいつかを計算した
  • □ 任期満了の年を、決算スケジュールと一緒に記録した
  • □ 本店移転をしている場合、登記上の本店所在地が現在の所在地と一致している
  • □ 最後の登記から10年以上経っていないか確認した(12年以上で整理作業の対象)

登記事項証明書は法務局の窓口やオンライン(登記情報提供サービス)で取得できます。「役員に関する事項」の欄に、就任・重任の年月日が記載されています。

よくある質問

任期満了に気づかず、数年過ぎてしまいました

まず定款、過去の株主総会議事録、役員の選任・就任の経緯を確認してください。そのうえで、実際の選任・重任の事実に沿って必要な登記を行います。過去に開いていない総会の議事録を後から作成してはいけません。遅れた期間については過料の対象になり得ますが、放置を続けるほど状況は悪くなります。最後の登記から12年に達する前に登記をすれば、みなし解散の整理作業の対象にはなりません。

株主総会を開いていないのですが、議事録は必要ですか?

登記申請には株主総会議事録が必要です。株主が社長一人の会社でも、形式として総会を開いて議事録を作成します。「実際には開いていない」状態で議事録だけ作ることは避け、この機会に毎年きちんと開催する習慣をつけてください。

みなし解散の通知が届いたら、何をすればいいですか?

通知に記載された期限(公告から2か月)までに、「まだ事業を廃止していない旨の届出」を法務局に出すか、役員変更などの登記を申請してください。届出だけをした場合でも、その後に必要な登記は別途行う必要があります。期限までに何もしないと解散の登記がされます。

任期を2年から10年に変更できますか?

非公開会社であれば、株主総会の特別決議で定款を変更すれば可能です。ただし、すでに在任中の役員の任期にも影響するため、変更のタイミングは司法書士に相談してください。

まとめ

  • 取締役の任期は原則2年、非公開会社は定款で10年まで延長できる
  • 任期満了は「選任後N年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の終結時」。選任日と決算日の関係で1年ずれることがある
  • 同じ人が続けても重任登記が必要。期限は2週間以内、登録免許税は資本金1億円以下で1万円
  • 登記を怠ると100万円以下の過料(代表者個人)
  • 最後の登記から12年以上経つと、みなし解散の整理作業の対象。毎年10月頃に公告、2か月以内に届出または登記がなければ解散の登記
  • みなし解散後も3年以内なら継続できるが、税務上は解散の日・継続の日で事業年度が区切られ、別途申告が必要になることがある

役員の任期管理は、決算と同じくらい大事な会社の定例行事です。「うちはいつが満了だったか」が答えられない場合は、お気軽にご相談ください。


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参考

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