寄附金の税務|法人の損金算入限度額と個人の寄附金控除をわかりやすく解説

寄附金の税務 確定申告

「寄附をしたから、その分だけ税金が安くなる」——実はこれ、正しくありません。

寄附金は全額が経費(損金)になるとは限らず、寄附先によって扱いが大きく変わります。また、法人と個人でも仕組みがまったく違います。

この記事では、寄附金の税務上の取扱いをわかりやすく整理します。

まず押さえたい2つの違い

法人個人
扱い損金(経費)所得控除または税額控除
どこで引く利益から差し引く経費ではなく、所得から差し引く
上限寄附先ごとに限度額あり総所得金額等の40%

個人事業主が純粋な寄附として支出した金額は、原則として事業の必要経費にはなりません。一定の寄附先への支出は、確定申告で寄附金控除の対象になります。この点を間違えている方が非常に多いので、まず押さえてください。

ただし、広告掲載など事業上の見返りがある支出は、寄附ではなく広告宣伝費などに該当する場合があります(後述します)。

法人の場合|寄附先で主に4つに分かれる

寄附先損金算入
国・地方公共団体全額
指定寄附金(財務大臣が指定したもの)全額
特定公益増進法人(日本赤十字社、学校法人、社会福祉法人など)別枠の限度額まで
一般の寄附金(上記以外)一般の限度額まで

国や自治体への寄附、日本赤十字社の義援金(財務大臣指定のもの)などは全額が損金になります。一方、それ以外は限度額の計算が必要です。

なお、上の4区分はまずは押さえたい主な区分です。完全支配関係のある国内法人どうしの寄附など、別の特則もあります。

限度額の計算式

一般の寄附金の損金算入限度額
(期末の資本金の額+資本準備金の額〔または出資金の額〕 × 当期の月数÷12 × 2.5/1,000 + 所得金額 × 2.5/100)× 1/4

特定公益増進法人への寄附金の特別損金算入限度額
(期末の資本金の額+資本準備金の額〔または出資金の額〕 × 当期の月数÷12 × 3.75/1,000 + 所得金額 × 6.25/100)× 1/2

税法には「資本金等の額」という別の用語もありますが、この限度額の計算で使うのは期末の資本金の額と資本準備金の額の合計額(または出資金の額)です。混同しないようご注意ください。

また、ここでいう所得金額は、決算書の利益そのものではありません。寄附金を損金算入しないものとして税務上計算した所得金額を使います。

特定公益増進法人への寄附は、この特別枠を使ったうえで、超えた部分は一般の寄附金の枠でさらに損金にできます。

限度額の目安

資本金1,000万円・所得500万円の会社(12か月決算)の場合です。

区分限度額
一般の寄附金約3.7万円
特定公益増進法人約17.5万円(別枠)

思ったより小さいと感じられたのではないでしょうか。一般の寄附金の枠はかなり限定的です。100万円を寄附しても、損金になるのは約3.7万円だけ、ということが起こります。

企業版ふるさと納税は仕組みが違う

地方公共団体の認定を受けた地方創生事業に寄附する「企業版ふるさと納税」は、寄附金の全額損金算入に加えて、一定の法人関係税の税額控除を受けられる場合があります。通常の自治体への寄附とは、税負担が軽くなる仕組みそのものが異なります。

個人の場合|寄附金控除

個人が「特定寄附金」を支出した場合、次の計算で所得控除を受けられます。

次の①②のいずれか低い金額 - 2,000円 = 寄附金控除額
① その年に支出した特定寄附金の合計額
② その年の総所得金額等の40%相当額

対象になる寄附先

  • 国・地方公共団体(ふるさと納税もこれに含まれます)
  • 公益社団法人・公益財団法人等のうち財務大臣が指定したもの
  • 特定公益増進法人(独立行政法人、学校法人、社会福祉法人など)
  • 認定NPO法人等
  • 一定の政治活動に関する寄附金(政党、政治資金団体など、一定の要件を満たすもの)
  • 特定公益信託の信託財産とするための支出

神社への寄進、町内会への寄付、個人への支援、クラウドファンディングの多くは対象外です。「寄附」と名前がついていれば控除できるわけではありません。

税額控除を選べる場合がある

政党等・認定NPO法人等・一定の公益社団法人等への寄附は、所得控除に代えて税額控除を選べます。

所得控除税額控除
引く場所所得から税額から直接
有利になる人所得が高い方所得が中程度以下の方

一般に、所得税率が低い方は税額控除が有利になりやすく、所得税率が高い方は所得控除が有利になることがあります。ただし、税額控除にも寄附金額や所得税額を基準とする上限があるため、実際に両方を計算して比較するのが確実です。

これは寄附金ではありません

見返りがある支出は、寄附金ではなく別の科目になります。

支出主な取扱い
広告掲載を伴う協賛金(社名が掲載される)広告宣伝費
取引先への慶弔金・贈答原則として交際費
事業上の合理的な理由がない資金援助寄附金となる可能性
被災した取引先の復旧支援(通常の営業に復するまでの相当期間内の見舞金)一定の要件で交際費等から除外され、損金算入できる場合あり
債権放棄寄附金になる場合と、貸倒損失等になる場合がある
同業者団体の通常会費諸会費
従業員への見舞金福利厚生費

協賛金は特に判断が分かれます。パンフレットに社名が載る、看板に企業名が出るなど宣伝効果があれば広告宣伝費です。純粋な支援で見返りがなければ寄附金になり、法人では限度額の制約を受けます。

取引先への支出も、「取引先だから交際費」と一律に決まるわけではありません。慶弔・贈答・関係維持が目的なら交際費、事業上の合理的な理由がない資金援助なら寄附金、というように、目的と事情で判断します。

見落としやすい「みなし寄附金」

寄附のつもりがなくても、税務上は寄附金として扱われることがあります。

  • 資産を時価より著しく低い価額で譲渡した場合の差額
  • 無利息・低利で貸付けを行った場合の通常の利息との差額
  • 債権を理由なく放棄した場合

グループ会社間や、社長個人と会社の間の取引で問題になりやすい論点です。「無償だから課税されない」わけではない点にご注意ください。

仕訳と申告の注意点

【法人】日本赤十字社へ10万円を寄附
(借方)寄附金 100,000 / (貸方)普通預金 100,000
※限度額を超える部分は申告書(別表十四(二))で加算します

【個人事業主】事業用口座から5万円を寄附
(借方)事業主貸 50,000 / (貸方)普通預金 50,000
※経費にはせず、確定申告書の寄附金控除欄に記載します

どちらの場合も受領証明書(領収書)の保存が必要です。個人の確定申告では添付または提示が求められます。

なお、金銭による寄附は、対価を得て行う取引ではないため消費税の課税対象外(不課税)です。土地の譲渡や利息などの「非課税取引」とは区分が異なりますので、混同しないようご注意ください。

なお、物品を購入して寄附した場合、その物品の購入代金は原則として課税仕入れになります。

よくある質問

ふるさと納税も寄附金ですか?

そのとおりです。自治体への寄附なので寄附金控除の対象になります。ただし住民税の特例控除があるため、所得等に応じた控除上限額の範囲内で、確定申告またはワンストップ特例の手続きを正しく行えば、原則として自己負担は2,000円になります。

逆にいうと、上限を超えた部分は控除されず、そのまま自己負担になります。詳しくは「個人事業主のふるさと納税完全ガイド」をご覧ください。

クラウドファンディングは控除できますか?

寄附先が自治体や認定NPO法人等であれば対象になります。返礼品があるタイプ(購入型)や、一般企業のプロジェクトへの支援は対象外です。運営元が発行する書類で確認してください。

神社への寄進やお祭りの寄付は?

個人の寄附金控除の対象にはなりません。法人の場合は一般の寄附金として扱われ、限度額の範囲でのみ損金になります。事業に関連する地域行事への支出であれば、交際費や広告宣伝費で処理できる場合もあります。

モノを寄附した場合は?

金銭でなくても寄附金になります。金額は時価で判定します。在庫商品を寄附した場合は、時価で売却して寄附したものとして処理するのが原則です。

まとめ

  • 個人事業主の純粋な寄附は原則として経費にならず、対象となるものは寄附金控除で処理する
  • 法人は寄附先で主に4区分。国・自治体・指定寄附金は全額損金
  • 一般の寄附金の限度額はかなり小さい(資本金1,000万円・所得500万円で約3.7万円)
  • 個人は寄附金額 − 2,000円(総所得金額等の40%が上限)
  • 認定NPO法人等・政党等は税額控除を選べる
  • 見返りがあれば寄附金ではなく広告宣伝費・交際費。取引先への支出は目的と事情で判断する
  • 低額譲渡や無利息貸付は寄附金とみなされることがある

寄附を検討されている場合は、実行する前にご相談ください。寄附先や方法によって、税負担が大きく変わります。

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参考

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