合同会社の事前確定届出給与|届出前に見直したい定款と社員総会のポイント

法人向け

合同会社でも、社長などの役員にボーナス(役員賞与)を支給して、会社の経費(損金)にすることはできるのでしょうか。

株式会社では、支給日と金額をあらかじめ決め、期限内に税務署へ届け出て、その内容どおりに支給するなどの要件を満たせば、役員賞与を「事前確定届出給与」として損金に算入できます。合同会社でも同じ制度を使えますが、株式会社とは仕組みが違うため、届出の期限をいつと考えるかが分かりにくい場合があります。

この点について、東京国税局は令和7年2月7日付で回答し、同月28日に文書回答事例として公表しました。この記事では、その内容をもとに、合同会社が事前確定届出給与を使うために整えておきたい点を解説します。

※ 合同会社の「社員」とは、一般的な従業員ではなく、会社に出資して構成員となっている人をいいます。このうち会社の経営を行う人が「業務執行社員」です。本記事では、法人税法上の役員に該当する業務執行社員への賞与を扱います。

事前確定届出給与とは

役員に支払う給与は、原則として、次の3つのどれかにあてはまらないと損金になりません。

種類内容
定期同額給与毎月同じ額を支払う役員報酬
事前確定届出給与「いつ・いくら払うか」を事前に決めて税務署に届け出たうえで、そのとおりに支払う給与(役員賞与など)
業績連動給与利益などの指標に連動して支払う給与(同族会社は原則として使えない)

役員にボーナスを支給して損金にしたい場合は、通常、事前確定届出給与を使います。届出のしかたや注意点は「役員賞与で節税|事前確定届出給与の仕組みと届出の注意点」でも解説しています。

届出の期限は「職務の執行の開始の日」が基準

事前確定届出給与の届出書は、次のうち早い日までに提出する必要があります。

  • 株主総会などで支給を決めた日(その日が職務の執行を始めた日より後なら、職務の執行を始めた日)から1か月を経過する日
  • その事業年度が始まった日から4か月を経過する日

株式会社の場合、役員の報酬は定時株主総会で決めるのが一般的で、定時株主総会の日が「職務の執行の開始の日」と考えられています。そのため、期限は「定時株主総会から1か月以内」と分かりやすくなっています。

合同会社で問題になる点

合同会社は、会社法上、株式会社とは仕組みが違います。

項目株式会社合同会社
役員の任期会社法で決まっている(取締役は原則2年、最長10年)会社法に定めがない
役員の選任・報酬の決定株主総会の決議で行う株主総会のような機関の定めがない
業務を行う人株主総会で選ばれた取締役定款に別の定めがなければ、社員になった人がそのまま業務を行う

このため合同会社では、株式会社のように毎年の役員選任や任期満了が当然に生じず、「職務の執行の開始の日」をいつとするかが分かりにくい場合があります。そのため、届出期限の根拠を、定款や社員総会の記録によって説明できるようにしておくことが重要です。

まず定款のどこを確認する?

合同会社で事前確定届出給与を検討する場合、最初に現在の定款を確認します。設立時のひな形をそのまま使っている会社では、業務執行社員の任期や報酬の決定方法、定時社員総会について定められていないことがあります。

ただし、これらをすべて定款へ追加しなければ事前確定届出給与を利用できない、というわけではありません。重要なのは、職務執行期間と報酬決定の手続が、定款、社員の同意書、社員総会議事録などによって一貫して説明できることです。

確認項目確認する内容
業務執行社員全社員が業務を執行するのか、特定の社員を指定しているか
任期業務執行社員の任期が定められているか
報酬決定誰が、どのような方法で報酬と賞与を決めるか
定時社員総会開催時期や、決算・報酬を決める手続が整理されているか
職務執行期間いつからいつまでの職務に対する賞与なのか
定款変更定款変更に必要な同意の方法がどのように定められているか
実際の運用定款の内容と、実際の社員総会・報酬決定が一致しているか

東京国税局の文書回答の内容

東京国税局の文書回答では、ある合同会社(同族会社)が、次のような手続をとる場合の取扱いについて照会しました。

  1. 事業年度終了の日から3か月以内に定時社員総会を開く
  2. それに先立つ臨時社員総会で、業務執行社員ごとの任期(この事例では10年)を総社員の同意で決め、定款に明記する。役員賞与の職務執行期間は、定時社員総会の開催日からとする
  3. 定時社員総会で、毎月の役員報酬と役員賞与の支給日と金額を、総社員の同意で決める(前期の決算を踏まえた業績見込みを考慮して決める)
  4. 決めた内容を届出書に書いて期限までに税務署に提出し、届け出た日に届け出た金額を支給する

これに対し東京国税局は、照会の事実関係を前提とする限り、次のとおりで差し支えないと回答しています。

  • この役員賞与は事前確定届出給与に該当し、損金にできる
  • 届出書の期限は、定時社員総会の開催日から1か月を経過する日と考えてよい

つまり、合同会社でも、定時社員総会で報酬を決め、その日を職務の執行の開始の日とする仕組みを定款などで整えておけば、株式会社と同じように期限を判断できる、ということです。

注意:この文書回答は、照会した会社が採用する一連の手続を前提とした個別回答です。すべての合同会社に、任期10年や同じ定款規定が一律に必要とされたものではありません。東京国税局も、事実関係が異なれば課税関係が変わることがあり、回答は申告内容を拘束しないと明記しています。

合同会社が整えておきたい3つのポイント

文書回答の事例をふまえると、合同会社が事前確定届出給与を使う場合は、次の点を定款や社員総会の記録で整えておくと安心です。

ポイント内容
① 定時社員総会の開催前事業年度の決算を踏まえて報酬を決められる時期に定時社員総会を開催し、その開催記録を残す。開催時期や手続を定款に定めるかは、会社の状況に応じて検討する
② 業務執行社員の任期文書回答と同様の整理を採用する場合は、業務執行社員ごとの任期を定め、定款への記載を検討する。任期を設ける場合は、任期満了後の再任や代表社員の登記への影響も確認する
③ 報酬を決める手続定時社員総会で、役員報酬・役員賞与の支給日と金額を総社員の同意で決め、議事録(同意書)を残す。職務執行期間の開始日は定時社員総会の日とする

合同会社の定款変更は、定款に別段の定めがある場合を除き、原則として総社員の同意が必要です。文書回答と同様の整理を行う場合は、役員賞与を決定する定時社員総会に先立って、定款変更などの準備を済ませておきましょう。

定款に任期を設ける場合は、任期満了後の取扱い、再任の手続、代表社員との関係なども整理する必要があります。税務上の届出期限だけを意識して条文を追加すると、会社法上の運用や登記との間に不整合が生じる可能性があります。定款変更は、必要に応じて司法書士にも確認したうえで行うことをおすすめします。

なお、この文書回答は新設法人ではない合同会社を前提としています。設立時から開始する役員の職務について届出をする新設法人は、原則として設立の日から2か月以内が提出期限となるため、この記事の「定時社員総会から1か月」とは扱いが異なります。

届出のあとにも注意

  • 届出書に書いた支給日に、届け出た金額どおり支給する。金額を変えたり支給日をずらしたりすると、原則としてその賞与の全額が損金にならない
  • 業績が悪化して減額したい場合などは、事情によって「変更届出」ができる場合があるので、支給前に顧問税理士に相談する
  • 届出期限は「1か月」と「事業年度開始から4か月」の早いほう。定時社員総会の開催が遅れると、4か月の期限のほうが先に来ることもある
  • 役員賞与は、所得税の源泉徴収や社会保険料(標準賞与額)の対象にもなる

まとめ

  • 合同会社でも、事前確定届出給与を使えば役員賞与を損金にできる
  • ただし、合同会社は会社法上、役員の任期や株主総会のような仕組みがなく、届出期限の基準となる「職務の執行の開始の日」があいまいになりやすい
  • 東京国税局の文書回答(令和7年2月7日回答・2月28日公表)では、定時社員総会で報酬を決め、任期を定款に明記するなどした事例で、定時社員総会の日から1か月以内の届出で差し支えないとされた
  • ただし個別の事例に対する回答で、すべての合同会社に同じ定款規定が必要とされたものではない
  • 定時社員総会・任期・報酬を決める手続を、定款や社員総会の記録で説明できるようにしてから届け出るのが安全
  • 新設法人は、原則として設立の日から2か月以内という別の期限がある
  • 届け出た日に届け出た金額どおり支給しないと、全額が損金にならない

合同会社の定款は、設立時のひな形のままになっていることも少なくありません。役員賞与を検討している場合は、まず定款を見直すところから始めましょう。


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参考

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